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養鶏から始まる地域の資源循環と風景づくり

後編合同会社セリフ 代表/株式会社点々 取締役 

羽田知弘

西粟倉村

合同会社セリフ 代表/
株式会社点々 取締役の羽田さんにお話を聞きました。

 

#養鶏業
#平飼い
#地域資源循環
#卵の自給率
#地域産業をつくる

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7「便利さや効率」より「生き延びる力」

丸尾

羽田さんご自身のこれまでの経緯を教えてください。

羽田

生まれは愛知県津島市です。父の実家がかなりの田舎で、子どもの頃は、川に潜って魚を捕ったり、山でクワガタを探したりして遊んでいました。

丸尾

自然と距離が近い幼少期だったのですね。

羽田

そうですね。当時は特別なことだとは思っていませんでしたが、今振り返ると、「自然の中でどう生きるか」を体感的に学んでいたんだと思います。

 

たぶんその頃から、「便利さや効率」よりも、「生き延びる力そのもの」に価値を感じていました。都会でうまく立ち回れるとかより、無人島で生き残れる方がかっこいいみたいな。本気でそう思っていました。(笑)

8「地域全体をどう循環させるか」という視点

丸尾

大学では林業を学ばれていますよね。

羽田

はい。大学では林業を専攻して、卒業後は東京の木材商社に入りました。
でもそこで、大きな「違和感」を感じるようになったんです。

丸尾

どんな違和感だったのでしょう?

羽田

木は売れている。数字上はビジネスとして成立している。
でも、それが「森が続くこと」と本当につながっているのか。
そこが腹落ちしなかったんです。

丸尾

西粟倉村に来られてからは、「西粟倉 森の学校(現在はエーゼログループ)」で働かれていましたよね。

羽田

はい。そこでは、林業を軸にしながら、教育・研修・商品開発・ツーリズムなど、さまざまな事業に関わりました。

丸尾

かなり幅広く、地域にも関わる事業ですね。

羽田

ええ。「森を守る」と言っても、理想論だけでは続かない。
どうやって仕事にするのか?どうやって人を巻き込むのか?
そのリアルを、現場で学ばせてもらいました。

 

そして林業だけでなく、「地域全体をどう循環させるか」という視点に出会いました。

丸尾

そして現在の養鶏に・・。

羽田

養鶏にたどり着いたのは、林業よりも「誰にとっても関係がある産業」だと感じたからです。「食」は老若男女すべてに関係がある。だから、「地域の循環を考える入り口」として、とても強いと思っています。

9食べたもので命はできている

丸尾

林業関連から養鶏へと大きな転換だと感じますが、羽田さん自身が、養鶏をやるべきだと確信したキッカケはありましたか?

羽田

ありますね。それは、子どもが生まれたときでした。
生まれたばかりの子どもが、お母さんの母乳を飲んで大きくなっていくわけじゃないですか。その母乳って、お母さんが食べたものでできています。

 

僕が畑で育てたサツマイモだったり、山で獲ってきた鹿肉だったり、近所のおばあちゃんが「これ食べんさい!」ってくれたものだったり。

 

そういうものを食べて、母乳が出て、子どもがすくすく育っていきます。それを見ていて、「これって卵もまったく一緒だな」と思ったんですよね。

 

「鶏が何を食べているか」で、卵は決まっている。それは当たり前のことなのに、みんな「卵は大好き!」って言うけど、その卵を産んだ「鶏が何を食べているか」は、ほとんど知らない。

 

母乳の話になると、「何食べてるかは大事だよね!」って、誰もが分かるのに。卵になると、その感覚がすっと抜け落ちるんです。

丸尾

養鶏という仕事の見え方も変わってきましたか?

羽田

変わりましたね。やっていることは確かに養鶏、いわゆる「卵屋」なんです。
でも、その先にあるのは卵そのものじゃなくて、「食べ物って何だろう?」とか、「命ってどうつながっているんだろう?」とか、そういうことを考えるキッカケをつくることだと思うようになりました。

丸尾

だから「卵は、入口にすぎない」ということでもあるのですね!

羽田

はい。卵をきっかけに、「鶏は何を食べているんだろう?」「じゃあ、自分は何を食べているんだろう?」って考えてもらえたら。

それだけで、この仕事をやっている意味は十分にあると思っています。

10「点々」「セリフ」会社名に込めた想い

丸尾

会社名も、とても象徴的ですよね。まず「点々(てんてん)」について教えてください。

羽田

西粟倉村は人口約1,300人。僕が暮らしている集落(知社地区)は、20世帯40人ほどの地区です。
この小さな“点”が、時間をかけて、別の地域へと広がっていく。
点が点々・・と生まれて、やがて面になる。そんなイメージで「点々」と名付けました。

丸尾

なるほど!「再現性」を意識している名前なのですね。

羽田

そうです。西粟倉だけが特別なのではなく、「小さくても成立するモデル」を「他の地域でも使える形」で残したいと考えています。

丸尾

「セリフ」という名前も印象的です。

羽田

セリフには、この土地から発せられる「言葉(台詞)」という意味を込めています。

 

「この土地では、こういう選択をしている」というメッセージを、世の中に向けて発したいという想いを込めました。

20世帯40人ほどの集落 知社地区

11美しい風景をつないでいくため

丸尾

羽田さんの話を聞いていると、自治体経営の話にも聞こえてきます。

羽田

そうですね。西粟倉村はある意味で一つの会社だと思っていて。
税収、雇用、産業、それらがどう循環するか・・。養鶏も「何羽飼えるか」ではなく、「何人の仕事を生めるか」という視点で考えています。

丸尾

3,000羽という上限も、その発想からも来ているのですね。

羽田

小さくても、きちんと回る産業をつくる。それが、中山間地にとっての現実的な選択で、結果的に地域を守ることにつながると思っています。

丸尾

これからのビジョンを聞かせてください。

羽田

養鶏場を中心に、店があって、レストランがあって、宿があって。集落を中心とした半径1キロの中で、仕事と暮らしが完結する風景をつくりたいと考えています。

 

2030年を一つの目安に、年商1億円規模で、20人くらいが、フルタイムだけに関わらず、関わりしろのある形でも働ける事業を目指しています。

 

「あんな小さな集落でもできたなら、うちでもできるかもしれない!」そう思える地域が一つでも増えたら、この取り組みには意味がある。卵は、そのための入り口なのです。

「半径1kmの風景をつくる」点々の資源循環図
丸尾

羽田さんにとって「地域に産業を生み出す」ことの最終の目的(ゴール)は、どうのように考えられていますか?

羽田

結局のところ、「美しい風景をつないでいくため」に始めたんだと思います。

 

この集落は何もない田舎って感じですけど、自分はこの風景がすごく好きで。
ただ、このまま同じ時間軸で進んでいくと、この風景はたぶん維持されないという感覚がありました。

丸尾

頭で思っているだけでは、この風景は残らないということですね?

羽田

そうなんです。だから産業と雇用をつくらなければいけない。

 

人が暮らし続けるためには、仕事が必要で、仕事があるためには、きちんと売上と利益が立つ産業が必要になります。

12「集落に生まれてくれてありがとう」

丸尾

最後の質問をしてもいいですか?
羽田さんが大切にしている言葉を教えてください。座右の銘などあれば。

羽田

難しいやつですね・・(笑)。大切にしている言葉、というわけではないんですけど・・・。
もらった言葉なんですが、すごく嬉しかったものがあって。
それが、今の事業の「ふんわりした道しるべ」みたいになっている、そんな言葉でもいいですか?

丸尾

ぜひ。

羽田

やっと子どもが生まれて、生後1か月くらいで、妻と一緒にこの集落に帰ってきたときのことです。

 

同じ集落で、近所に住んでいる86歳と93歳のおばあちゃんがうちに来てくれて、その二人が、うちの息子を初めて抱いたときに、こう言ってくれたんです。

 

「集落に生まれてくれて、ありがとう」って。

丸尾

・・・すごい言葉です。

羽田

それが、僕はすごく嬉しくて。

 

だから、この人たちの目が黒いうちに、「ああ、この集落は大丈夫だな」って、「この知社地区は、羽田くんたちが頑張ってやってくれよるから大丈夫じゃ」って思ってもらえたらいいなって思っています。

丸尾

その言葉が、原動力になっているのですね。

羽田

そうですね。ここ知社地区は、20世帯40人の集落です。
自販機もないし、経済活動と呼べるものもほとんどない。
でも、だからこそ、みんなで支え合わないと生きていけない。

 

これまでも、そういうマインドで生きてきたおばあちゃんたちがいる。それは、正直、僕にとってはすごく救いなんです。
僕自身の言葉という感じではないかもしれないですけど。

養鶏から始まる地域の資源循環と風景づくり

笑顔で横を向いて話を聞いている羽田さん

合同会社セリフ
地域資源を編集して生業をつくる。岡山県北、人口1300人の村・西粟倉村を拠点に活動。10年以上使われていなかった耕作放棄地を再生し、地域の未利用資源を飼料化する資源循環型の平飼い養鶏を実践。たまごの味わいを決定づける飼料は、くず米やビール粕等の地域の未利用資源を中心とした100%国産・無添加の自家配合発酵飼料を使用。

 

住所:岡山県英田郡西粟倉村知社258番地1

ホームページ:https://egg.serif.ltd/

 

株式会社点々
商品開発・ブランディング等を担う。合同会社セリフの卵を入口に、レストラン・宿・店舗など「半径1キロの暮らしと仕事の風景」を重ね合わせた産業構築を目指す。点が点々と生まれ面となる未来を描き、中山間地のロールモデルとなる循環型産業の構築を目的としている。
ICC KYOTO 2025フード&ドリンクアワード準優勝
POTLUCK AWARD 2025グランプリ受賞
岡山イノベーションコンテスト2025 グランプリ受賞、オーディエンス賞受賞

 

住所:岡山県英田郡西粟倉村知社197番地1

ホームページ:https://tenten.fun/

お話を聞かせていただきありがとうございました!!
まったくゼロから養鶏業を立ち上げられたお話から、今の養鶏に対する課題感、そして、
養鶏を入り口として、地域(地区)に産業を生み出していくビジョンまで、のめりこんで聞かせていただき、地域で暮らす個人としても、事業をつくる経営者としても大変刺激をいただきました。

 

手前に並んだ瓶詰め商品と奥で焦点がぼけて映る羽田さんとインタビュアー

お聞きした取り組みについては、岡山イノベーションコンテスト2025をはじめとして様々なビジネスアワードにおいても賞を受賞されています。
自らの事業についての言語化、そしてそれを伝えていくことについても、とても大切にされているのだと感じました。

 

ステージ上でマイクを持ちプレゼンテーションを行っている白衣姿の羽田さん

ビジネスアワードでピッチ登壇する羽田さん

 

インタビューと合わせて、実際の鶏舎も案内いただき、まさに「地域の資源をどう編集して、生業として成立させるか」をテーマとして日々取り組まれているリアルな姿にも大変感銘を受けました。

 

室内で頬に手を当てて話を聞いているインタビュアー

「地域に産業を生み出す」のは「美しい風景をつないでいくため」というコアにある想い、そして「他の地域で再現可能なモデル構築」を目指すという軸についてとても印象に残りました。
羽田さんは、愛知県出身、東京からIターンで、養鶏業から地域を変えていくかえーる人でした!

 

屋外の鶏舎の前でカメラに向かって手を振っている羽田さんとインタビュアー

 

▼前編はこちら

養鶏から始まる地域の資源循環と風景づくり(前編)

前編へのリンク画像

  • 取材日:2025年12月1日
  • 撮影地:合同会社セリフ養鶏場、株式会社点々(岡山県西粟倉村知社)
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