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養鶏から始まる地域の資源循環と風景づくり

前編合同会社セリフ 代表/株式会社点々 取締役 

羽田知弘

西粟倉村

合同会社セリフ 代表/
株式会社点々 取締役の羽田さんにお話を聞きました。

 

#養鶏業
#平飼い
#地域資源循環
#卵の自給率
#地域産業をつくる

index

1鶏をどう育て、どう見せ、卵をどう届けるか

丸尾

まずは、羽田さんがされていることを改めて教えてください。

羽田

関わっている会社としては二つあって、
一つは合同会社セリフで、「平飼いの有精卵の生産」を行なっています。
もう一つは株式会社点々(てんてん)で、「地域資源を活かした商品開発」をしています。

丸尾

事業内容だけ見ると、それぞれ別々のようにも見えます。

羽田

そう見えるかもしれないですね。でも、「鶏をどう育てるか」、「どう見せるか」、「卵をどう届けるか」、これらは全部同じ一本の線上にあります。

点々が開発し販売しているさまざまな商品
丸尾

ちなみに販売されている卵は1個100円なのですね。

羽田

安い卵と比べると高いのは事実です。ただ、高級卵をつくりたいわけではなく、「どういう背景で生まれた卵なのかが、きちんと見える」ことを大事にしています。

 

養鶏の方法としても、輸入飼料を使わず、地域の中で出てくる「未利用資源」を餌にしながら、「資源循環型の養鶏」をしています。

主に都市部の食料品店、レストランなど、また岡山県内外のスーパーマーケットでも取り扱われている

2まったく順調ではなかった養鶏業の新規立ち上げ

丸尾

スタートされてから一年程ですが、鶏は何羽くらいいるのでしょうか?

羽田

もともと600羽で始めて、今は1,000羽です。再来週には1,200羽になります。
現在も新たな鶏舎を建てていて、3棟目がもうすぐ完成するところです。
最終的には3,000羽で、鶏舎は合計5棟までを計画しています。

建設中の3棟目の鶏舎(鶏舎は、西粟倉村 知社地区の山間に位置する )
丸尾

新規での養鶏事業の立ち上げはどのような感じでしたか?

羽田

全然順調じゃなかったです(笑)。
2024年8月に鶏舎を建てて、11月に600羽が来て、年末頃から卵を産み始めました。

 

でも、年末年始って飲食店が閉まるじゃないですか。だから販路もない。
卵は毎日産まれる。賞味期限もあります・・・。

全面平飼いの鶏舎 茶色が雌で、白色が雄
丸尾

逃げ場がないですね・・・汗。

羽田

SNSで協力を呼びかけても捌ききれない状態でした。
お金をかけて餌をあげて、お金をかけて卵を捨てる、みたいな状況でした。

 

最初の3か月は本当に大変でした。家でどれだけ卵を食べても減らない・・・。

丸尾

・・・それを乗り越えて、今があるのですね。

羽田

少しずつ販路が広がって、今はその日に産んだものは、その日のうちに出荷できる流れができました。

3間伐材をつかった鶏舎、未利用材をつかった飼育環境

丸尾

養鶏というと、まず鶏舎を建てる必要がありますが、羽田さんの鶏舎づくりには、どんな考えがあったのでしょうか?

羽田

鶏舎も単なる設備ではなくて、地域の資源循環の一部だと思っています。
構造としては、村の間伐材を使って、木造の鶏舎を建てています。
ビニルハウスや鉄骨にすれば楽なんですけど、それだと地域の林業ともつながらないので。

丸尾

鶏舎自体も資源循環の一部と捉えているのですね。

羽田

それに、鶏舎の床には、木材工場から出る木くずや、米を収穫したときに出るもみ殻を敷いています。これが鶏の寝床になります。

丸尾

さらに地域内にある「未利用材」も、飼育環境に活用しているということですか!?

羽田

そうなんです。しかも、鶏がそこで生活すると、糞と混ざって発酵が進む。
最終的には畑に戻せる資源になります。「鶏舎→鶏→糞→畑→作物→餌」という循環を、はじめからイメージしていました。

4「未利用資源」を餌に活用 事業規模は資源量から決めた

丸尾

鶏に与える餌も、資源循環としては重要なポイントですよね。

羽田

はい。そもそも養鶏って、「経費の6割が餌代」なんですよ。
1キロあたり1円変わるだけで、コストとしても、かなりのインパクトが出ます。

 

そこで地域を見渡すと、本来は捨てられている資源(未利用資源)がたくさんある。

 

例えば、餌として使っているのは、規格外のくず米や、コイン精米機から出る米ぬか、醸造所のビール粕(かす)などです。

 

それらを使い切れる規模で事業を組み立てたいと思いました。

丸尾

では、地域のそういった未利用資源で、すべて餌をまかなうという形でしょうか?

羽田

いえ、餌は全部を未利用資源にするわけではなく、餌全体のうち、だいたい未利用資源が50%くらいを目安にしています。

丸尾

未利用資源100%にしない理由はなんでしょう?

羽田

理由はいくつかあって、その一つは、安定性です。
地域の未利用資源は「ある時はあるけど、ない時はない」。だから未利用資源100%にすると、事業が不安定になります。

丸尾

そもそも上限3,000羽というのは、一般的な養鶏業の中では、おそらく少ない羽数ですよね?

羽田

そうです。地域の未利用資源を、無理なく回しきれる羽数です。

丸尾

でも経営的には「売上目標から逆算して羽数を決める」ことが多そうですよね?

羽田

多いと思います。でも僕は逆で、資源量から事業規模を決めるやり方を選びました。
「中山間地で、持続可能なモデル」をつくるという目的からすると、今のところ3,000羽だと判断しています。

5「卵の自給率」における本質的な課題感

丸尾

最近では食の自給率問題が言われますが、「卵の自給率」という観点としてはどうなんでしょうか・・?

羽田

「卵の自給率」においても課題があると考えています。日本における卵そのものの自給率は約97%あります。数字だけ見ると、「日本の卵はほぼ自給できている」と思われがちなんですが、実態はまったく違います。

丸尾

・・というと!?

羽田

鶏が食べている餌の自給率まで含めて考えると、卵の実質的な自給率は12%程度しかありません。つまり、日本で生産されている卵のほとんどは、輸入飼料に依存して成り立っているということです。

丸尾

それはかなり衝撃的な数字ですね。

羽田

はい。トウモロコシや大豆など、餌の原料はほぼ海外からの輸入です。
円安や、紛争、輸送コストの上昇があると、餌代が一気に跳ね上がる。
養鶏業は、餌代が経費の約6割を占めるので、ここが不安定になると、事業そのものが揺らぎます。

丸尾

食料安全保障の話にもつながりますね。

羽田

まさにそうだと思っています。卵は毎日食べる、最も身近な食材の一つです。
日本人は、一人あたり年間約320個の卵を食べています。世界でもトップクラスの消費量です。それだけ身近なのに、その背景がほとんど知られていません。
もし輸入が止まったら、卵は今の価格で、今の量手に入るのか?という課題感です。

丸尾

確かに・・、考えたことがない人がほとんどかもしれません。
地域の未利用資源を餌に活用していくことは、本当の意味で「卵の自給率を上げていく」ことにつながるとのですね。

羽田

だから僕は、「100円の卵を売りたい」わけではなくて、考えるきっかけになる卵を届けたいと考えています。

丸尾

でも「卵の自給率を上げる」ことは、簡単ではない気がしますね・・!?

羽田

国全体で一気に変える、などという話ではないと思っています。
でも、地域単位でできることはあると考えています。

 

例えば、半径1キロの中で出る未利用資源を集めて、餌の一部をまかなうこと。3,000羽規模であれば、それが現実的にできます。

 

そういう観点からも、養鶏業は事業規模を「大きくしない」という判断が、結果的に自給率を守ることにつながると考えています。

丸尾

ちなみに、鶏はどういった品種を飼育されているのですか?

羽田

私たちは純国産品種の「後藤もみじ」を使っていますが、日本で使われている採卵用鶏のほとんどは、実は外国品種です。

丸尾

鶏自体の種も輸入に依存している形なのですね。

羽田

はい。原種は海外にあるので国際情勢が不安定になったら、餌だけでなく、鶏そのものが入らなくなる可能性もある。

6ケージ飼い99%の国で、あえて選ぶ道

丸尾

養鶏業全体において平飼いの比率はどれくらいなのでしょうか。

羽田

日本では、ケージ飼いが99%を占めていて、平飼いは1%しかありません。しかも「平飼い」の定義がけっこう広くて、地面で飼っていれば平飼いと名乗れてしまいます。

 

そんな中で、僕らは、「3倍値段が高いから、3倍おいしい」という売り方をしたいわけではなくて、「何を食べさせて、どう育てているかを説明できる養鶏」を選びました。

丸尾

点々の役割が、ここで効いてきますね。

羽田

はい。セリフが「安定的に卵を生産する側」だとしたら、点々は「価値を翻訳する側」です。

丸尾

単に養鶏をしているのとはまったく違う印象ですね。

羽田

そして、卵は入り口だと考えています。
本当にやりたいのは、「地域に産業と雇用」を残すこと。
それが、この場所に「風景を残すこと」につながると考えています。

 

自分の感覚としては、卵屋をやっているというより、地域の資源をどう編集して、生業として成立させるかをテーマに取り組んでいると感じています。

養鶏から始まる地域の資源循環と風景づくり

建物の入り口に掛けられた「点々」のロゴマーク入りの白い暖簾

合同会社セリフ
地域資源を編集して生業をつくる。岡山県北、人口1300人の村・西粟倉村を拠点に活動。10年以上使われていなかった耕作放棄地を再生し、地域の未利用資源を飼料化する資源循環型の平飼い養鶏を実践。たまごの味わいを決定づける飼料は、くず米やビール粕等の地域の未利用資源を中心とした100%国産・無添加の自家配合発酵飼料を使用。

 

住所:岡山県英田郡西粟倉村知社258番地1

ホームページ:https://egg.serif.ltd/

 

株式会社点々
商品開発・ブランディング等を担う。合同会社セリフの卵を入口に、レストラン・宿・店舗など「半径1キロの暮らしと仕事の風景」を重ね合わせた産業構築を目指す。点が点々と生まれ面となる未来を描き、中山間地のロールモデルとなる循環型産業の構築を目的としている。
■ ICC KYOTO 2025フード&ドリンクアワード準優勝
■ POTLUCK AWARD 2025グランプリ受賞
■ 岡山イノベーションコンテスト2025 グランプリ受賞、オーディエンス賞受賞

 

住所:岡山県英田郡西粟倉村知社197番地1

ホームページ:https://tenten.fun/

  • 取材日:2025年12月1日
  • 撮影地:合同会社セリフ養鶏場、株式会社点々(岡山県西粟倉村知社)
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