[Uターン・Iターン・移住]
いーなかえーるは、岡山県北の
求人情報をご紹介します

岡山県北で求人広告をお考えの企業様

[Uターン・Iターン・移住]いーなかえーるは、岡山県北の求人情報をご紹介します

「うちにしかできない技術」新たな100年への挑戦

株式会社アイテック・ツリタニ 代表取締役

釣谷 育宏

津山市

株式会社アイテック・ツリタニの釣谷育宏さんにお話を聞きました。

 

#金属微細加工

#創業100年

#複合加工

#自社開発の専用マシン

#ニッチな業界

index

1創業100周年の金属微細加工メーカー

丸尾

今年で創業100周年、おめでとうございます。改めてどのような会社か教えていただけますか?

釣谷

ありがとうございます。さまざまな困難に見舞われたこともありましたが、皆さまのご支援のおかげで創業100周年を迎えることができました。

1924年、私の「ひいおじいちゃん」である釣谷寅次郎が、兵庫県赤穂市でプレス加工を始めました。以来、溶接加工やフォーミング加工、鍛造加工などの金属微細加工品を製造しています。

丸尾

それらは、どのような用途に使われるものなのでしょうか?

釣谷

加工した製品は、電化製品や、X線検査や超音波検査などの医療機器、自動車の部品などに使用されています。家庭用のガス漏れ検知器や釣具の部品としても使われている、非常に小さな製品です。

パソコンのCPUに関連する製品ですと、線径が0.4mmの製品もあります。

丸尾

0.4mm! 小さい!

釣谷

もっと小さな製品もありますよ。異なる素材同士を溶接したりL字に曲げる加工をしたりして精密部品を製造しています。

 

また、モリブデンという非常に硬い素材の微細加工をできるのは、現在、日本では弊社だけだと聞いています。

丸尾

日本で1社のみ!?(驚)

釣谷

弊社のホームページを見たというお客さまから、「モリブデンの加工はできますか? できる会社が他にないんです」と問い合わせをいただいたことが始まりでした。それまでモリブデンの加工をしたことはなかったのですが、要望にお応えしたいと思い、挑戦してみたんです。けれど、うまくいかなくて。それでも社員のみなさんが知恵を出し合い、試行錯誤した結果、熱を加えて加工する温間鍛造にたどり着きました。今では、量産できるようになっています。

2あらゆる可能性に挑戦。自社つくる「専用マシン」

丸尾

アイテック・ツリタニの強みはどういうところだと感じていますか?

釣谷

弊社の強みは、プレス加工に加え、鍛造加工や溶接加工なども組み合わせた「複合加工」ができることだと考えています。弊社の取引先のお客さまからは、プレス加工と溶接加工を別々の会社に依頼した場合よりも、納期やコスト、トラブルが発生した場合の対応など話がスムーズだとお褒めの言葉をよくいただきます。

 

また弊社は、加工するための機械も自分たちで設計して「専用マシン」を作っているんです。

丸尾

製品を作る「専用マシン」を自社で作られているんですか!?

釣谷

ものづくりが大好きな社員が、自社の製品のためだけを考えた「専用マシン」を作っています。なので、お客さまから「ちょっと寸法を短くしてくれないかな?」などの依頼にも迅速に対応できます。

 

いろいろと試行錯誤しながら、今まで蓄積してきたノウハウに自分たちならではの知恵をプラスして作り出しています。例えば「専用マシン」を見ていると、製品が流れる部分に「謎のビニール」が付いていたりします。社員に聞いてみると、それは製品に傷を付けないためであるとか。社員の努力の結晶で出来上がっている「専用マシン」なんです。

3ニッチな業界でいいから、ナンバー1に

丸尾

釣谷さんが代表取締役に就任されたのはいつごろからですか?

釣谷

2010年です。実は、就任当初、会社の経営があまりうまくいっていない時期でした。先代である私の父親が経営責任を取る形で社長を退き、私に会社経営が託されました。それより前から私が後を継ぐことは決まっていたのですが、想定より早く、しかも経営を回復させないといけないというミッションも担うことになりました。それが、私の経営者としてのスタートです。

丸尾

それまではどのような経緯でしたか?

釣谷

私は高校まで大阪の東大阪で育ち、広島の大学を卒業しました。兄弟は、兄と姉がいます。大学卒業後は、以前より興味のあった建築業界に進んでいたのですが、大学を卒業して2年が経った頃、会社の後継者について父親と話し合いました。家庭内でいろいろ話しあった結果、私が継ぐという道を選びました。

 

後を継ぐと決めてからは、「英語力を習得する必要がある」との父親からの提案で、アメリカのアリゾナ州に約2年間留学しました。帰国後は、本社の開発課の一員として商品開発に2年間携わりました。

 

その後シナリオ通りであれば、さらに製造現場を2年間経験した後、経営の勉強をして、後を継ぐという想定でした。ですが製造現場で1年ほど経った頃に、会社経営を託される話になったんです。

丸尾

代表取締役に就任した当時、どのような心境でしたか?

釣谷

「どうしようかな。まぁ、なんとかなるかな?」くらいに思っていました。まずは、売上げが下がっている主力製品以外の売上げでまかなえるくらいの人員体制にしたらいいのでは? と考え、希望退職を募ることから始めました。

ですが、そううまくはいかなくて。売上げがさらに落ちる。経営がうまくいかない。どうしよう。そんな負のスパイラルが10年ほど続きましたね。

 

事業もうまくいかない経験を何度もしました。ようやく落ち着いたと思った頃、今から5年程前ですが、津山信用金庫さんが主催されている経営者育成プログラム「つしん未来塾」に参加させてもらったんです。そこで教わった「ニッチな業界でいいから、ナンバー1に」との言葉が、自分の中ですごく響いたんです。

 

それまでは、「大きいロット数の受注が、売上げに繋がる!」と思っていたんです。ですが、うちより規模の大きい会社が受注するロット数と比較すると少ないわけで。そうなると価格競争で負けるんですよね。

 

なので、価格競争に労力を費やすよりは、少量でもいいから「うちにしかできない技術」で、お客さまが真に困っていることにしっかり目を向けて貢献することを追求する方がいいと思うようになりました。

4「複合加工」で、コスト削減に繋がる提案

丸尾

今後、さらに取り組んでいきたいことを教えてください。

釣谷

現在、弊社の強みである「複合加工」のレパートリーを増やすべく、切削加工に挑戦しています。切削加工の良さは、きれいな彫刻のような高い精度の製品を作れるところにあります。その精度は、鍛造加工ではどうしてもできないんです。ただ、切削加工は、鍛造加工と比較するとコストが約10倍になる物もあるんです。

 

そこで、「切削加工もできますが、機能面で納得してくださるなら鍛造加工の場合、10分の1くらいの価格で作れます」と、コスト削減に繋がる提案が可能となります。

 

また、今後は、「ロボットアーム」を活用して、人間とロボットの共存ができる現場作りを目指していきたいと思っています。弊社の「専用マシン」は、無人稼働できるように作っているので、単純な作業はロボットに任せて、アイデアや知恵を出すなどの人間にしかできないことに力を注ぎたいと思っています。

5「今日あることを感謝しよう」

丸尾

最後に、大切にされている言葉を教えてください。

釣谷

本当に、この10年間苦しくて。母親から、「苦あれば楽ありやで」とずっと言われ続けて、それを励みに頑張ってきました。

 

「もう、これは難しいんじゃないか・・」という場面が、2回ありました。でも、その時に、思いもしないところから救いの手が来て乗り切ることができたんです。目に見えない何かから守られていると感じました。それ以来、ご先祖はもちろんのこと、社員、お客さま、業者さんなどありとあらゆる人に感謝の心を持つようになったんです。これからも謙虚な姿勢で、今日あることに感謝していきたいなと思っています。

なので、大切にしている言葉は「今日あることを感謝しよう」です。

「うちにしかできない技術」新たな100年への挑戦

株式会社アイテック・ツリタニ

1924年兵庫赤穂市にて創業。2012年津山市に本社を移転。電子部品リードや、各種ランプ電極用リードなどを手がける金属の精密微細加工メーカー。溶接加工、フォーミング加工、鍛造加工など永年の社歴で培ったノウハウを組み合わせた「複合加工」を得意とする。

お話を聞かせていただきありがとうございました!今年で創業100年を迎えられられる歴史の中で、時代の変化に対応し、自社でしかできない価値を追求し、挑戦を続けられているお話に終始聞き入ってしまいました。「ニッチな業界でいいから、ナンバー1に」という言葉がとても印象に残っています。お話をしながら工場内も案内いただき、顕微鏡で見なければ見えないような微細な製品をつくるための自社開発の機械設備が並び自動で動いている姿は、とても興味深くずっと見ていられる光景でした。釣谷さんはアメリカからUターンで、金属微細加工でもモノづくり業界を変えていくかえーる人でした。

 

  • 取材日:2024年7月30日
  • 撮影地:株式会社アイテック・ツリタニ(岡山県津山市)
岡山県北で
はたらく
くらす
かえ~る人