[Uターン・Iターン・移住]いーなかえーるは、岡山県北の求人情報をご紹介します
食を通じ、ひとを育て、地域を育てる。
株式会社マルイ
松田 欣也
岡山県にある、株式会社マルイ 代表取締役 松田 欣也 - 岡山県北の求人情報サイト「いーなかえーる」さんに、お話を聞いてきました。
index
1スーパーマーケットのパイオニア。
丸尾 |
県北の皆さんはご存知のマルイですが、どういった会社ですか? |
---|---|
松田 |
実は、西日本のスーパーマーケット第1号なんです。世の中にスーパーマーケットというものがないときから、マルイはスーパーマーケットづくりをしていました。今は当たり前のことですが、それまでは商品に売価が付いているということはなかったんですね。ご注文いただいたものを仕入れ、お客様と1対1で売買するというのが、それまでの食料品屋さんの基本的なやり方でした。それを、きちんと売価を付けて、どなたでも同じ値段で気軽に買い物できるようにしようと考え、1955年にスーパーマーケット事業を始めました。当時は競合がいなかったので、規模を拡大しようと思えば拡大できたんですが、それよりも「地域に密着した、地域に必要なスーパーマーケットをつくること」を大切に考え、岡山・鳥取に根差すスーパーマーケットを目指して今日までやってきました。 現在もスーパーマーケットが主たる事業体で、岡山県北を中心とした「株式会社マルイ」の他に、鳥取に本社を置く「サンインマルイ」や、マルイよりも少し価格帯の低い「エスマート」など、7社でマルイグループを形成しています。社内で「社長!」と言うと、7人が振り返るのが今のマルイグループなんですが、これは私が「会社をより強くするために、社長の仕事を任せられる人材を育てていくことが重要だ」と考えているためです。実際に経営者としての仕事を任せられる人が7人いたから、今の状態になっているわけですね。 |
2地域のプラットフォームとして。
丸尾 |
今後の展望として、どういったことをお考えですか? |
---|---|
松田 |
今はマルイグループとはいっても、それぞれ別の会社なので、人材育成や商品物流を各々が独自にやっています。マルイホールディングスを作ることを計画しています。今後はマルイホールディングスがプラットフォームとして、社員の採用や育成、商品の流通や管理を一括で行うことができ、皆様により質の高いサービスをご提供できると考えています。ただし、地域の特性を生かした商品開発は、引き続き各社が根付いている地域でそれぞれ取り組み、地域密着型の良さを生かす運営にします。 |
丸尾 |
マルイはスーパーマーケットを土台にしながら、地域自体のプラットフォームになってきていますね。 |
松田 |
私たちスーパーマーケットの大きな役割の1つが、地域でお金を循環させることだと思っています。お買い物をしていただいたお金を、この地域の農作物や畜産物を育てることに使い、それを仕入れて販売するというような循環型の仕組みをつくる。そういった役割をしっかり担える会社にしていきたいと思っています。 |
3マルイの根幹にある考え方とは。
丸尾 |
松田社長は社長になられる前は、どういったことをされていたんですか? |
---|---|
松田 |
京都にある同志社大学を卒業後、ヤマハ発動機に就職しました。世界を飛び回って仕事がしたいと思っていたので、その会社を選択したわけです。 |
丸尾 |
ご出身も京都ですか?津山に来られたきっかけとしては。 |
松田 |
出身は神戸ですが、家内の実家がスーパーマーケットを営んでおり、それが津山にあったためです。その実家のスーパーマーケットというのは、マルイのことです。 |
丸尾 |
現在、マルイの年商は500億近くですが、松田社長はこちらに来られた時は、スーパーマーケットに対するノウハウはお持ちだったんでしょうか? |
松田 |
いえ、全くありませんでした(笑)。商売については、すべて創業者から教わりました。なかでも、核心的な教えは「商いは公正でなければいけない」ということ。朝一番は値段が高くて閉店間際になると安くなるとか、朝一番には商品がたくさんあって閉店間際には少ない、といったようなことが絶対にあってはいけないと。最後のお客様がお帰りになるまで、販売するべき商品の値段を合わせ、数を揃える努力をしなさいということを教えられました。というのも、最後のお客様が帰られたときに商品が大量に余っていると、廃棄しないといけなくなる。それを見越した値段設定をすると、価格が高くなって決してお客様に良いことにはならない。かといって、少なすぎるとお客様が欲しいものを買うことができない。多くてもいけないし、少なくてもいけないんです。そういった“数をきちっと合わせる努力”をしなさいと言われていました。 |
4食育の最先端を発信する。
丸尾 |
マルイさんは、食育などの試みにも力を入れられていますが、どういった想いで始められたのでしょうか? |
---|---|
松田 |
創業以来、食生活の大切さをテーマにやってきたんですが、食育基本法が制定されたこともあり、「食の大切さをもう一度見直そう」という想いで始めました。2006年に食育推進室をつくったんですが、他のスーパーマーケットにはまだこういうものがないそうで、農林水産省の方々から最新の情報を提供していただいています。 |
丸尾 |
食に関するマルシェのようなこともされていますよね。鳥取や津山で開催されていますが。 |
松田 |
はい。多くの地域の生産者の方々や商品の物流を担っている方、またメーカーさんが一同に会して、それぞれが扱っている食材の特徴や価値をお客様に伝えていただく場として、岡山で「フードフェスタ」、鳥取で「マルコラ」という食育イベントを年に一回開催しています。食育自体は毎日それぞれのお店で取り組んでいますが、なかでも最先端のものを発信し、共有しようというイベントですね。 |
5生産者から適正価格で仕入れる仕組みを。
丸尾 |
食育でいうと、専門のNPO法人を組織されていますよね。 |
---|---|
松田 |
NPO法人マルイ・エンゲージメント・キャピタルというものがあり、これがフードフェスタやマルコラ、日々の食育活動の主たる事業体になっています。このマルイ・エンゲージメント・キャピタルで、農作物をつくっていらっしゃる方々と、それを買われる方々、そしてマルイが一緒になって商品開発をすることを考えています。 |
6損得より善悪を考える。
丸尾 |
では最後に1つ質問ですが、松田社長が日頃から大切にされている言葉や座右の銘を教えていただけますか? |
---|---|
松田 |
「損得より善悪を考えよ」ですね。 |
丸尾 |
これは日頃から周囲にもお伝えしていらっしゃる言葉でしょうか。 |
松田 |
そうですね。目先の損得を考えても、決していいことにはならない。世の中のため、人のために、どうあるべきかということをしっかり考えた上で行動していくということですね。 |
松田 |
マルイ・エンゲージメント・キャピタルが受け持っている大きな事業の1つに、寄附つき商品というのがあるんです。これは、モノを作っているメーカーさんから1円、食材や商品を運んでいるベンダーさんから1円、私たちマルイが1円、1つ商品が売れるたびに計3円をお住まいの地域の小学校に寄附するという取り組みです。これを鳥取県と岡山の全エリアで展開しており、今年は2,000万円以上になる見込みです。 |
丸尾 |
まさに人や地域を育てながら、お金が循環しているんですね。 |
松田 |
私はこれまで9年間、岡山県の教育行政に携わっているんですが、教育の現場って厳しいんですよ。潤沢な予算があるわけではないので、図書室にこどもたちが今読みたい本が置かれていなかったり、スポーツに必要なものが揃っていなかったりします。これからは企業と地域が別々に動くのではなく、一緒になって地域を支えていく仕組みをつくっていかないといけないと思うんですね。その一環がこの寄附つき商品ということです。 |
丸尾 |
いろんなことをしたい人がどんどん集まってくればいいですね。もともと母数は少ないですけど、これからこういった取り組みが見える化されていくと、だんだん地元に帰ってくる人が増えていくと思います。本日はありがとうございました。 |
食を通じ、ひとを育て、地域を育てる。
株式会社マルイ
西日本エリアの食料品店では最も早くセルフサービス方式を導入したスーパーマーケット。岡山県、鳥取県で食品スーパーマーケットチェーンを展開。「食」を通して地域に貢献していくことを目指し、食育活動を通した体験と気づきの場を創出、スポーツ振興支援など様々な取り組みを行っている。
お話を聞かせていただきありがとうございました。松田さんとお話をさせていただき、スーパーマーケットの枠を超えた、地域を創っていく取り組みについて、学びがたくさんありました。共に地域を盛り上げる取り組みができればと強く感じました。松田さんは神戸出身で、これからの地域を変えるかえーる人でした。
- 取材日:2017年10月31日
- 撮影地:株式会社マルイ