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手仕事が光る、無添加「手練り練乳」。蒜山高原の雄大な自然とともに
目次
手練り練乳MOUNTAIN-MOUNTAIN(マウンテン マウンテン)
自然豊かな高原リゾートとして知られる、岡山県最北端の「蒜山(ひるぜん)高原」。
蒜山といえば、スキーや温泉などさまざまな観光スポットが有名ですが、「蒜山ジャージー牛乳」を思い浮かべる人も多いでしょう。ここ蒜山は、ジャージー牛の飼育頭数が日本一。日本のジャージー牛のうち約5分の1が蒜山高原で育てられています。
そんな新鮮なジャージー牛乳をふんだんに使ったスイーツを楽しめるのが、2018年にオープンした「MOUNTAIN-MOUNTAIN(マウンテン マウンテン)」。
蒜山大山スカイライン沿いにある「MOUNTAIN-MOUNTAIN」外観
訪れたのは7月末でしたが、標高約450~500mの高原地帯というだけあり、空気が爽やかで澄んでいます。
人気メニューの「手練り練乳コーヒー」をいただきながら、商品への想いや魅力を店長の片山さんに伺いました。
木目を中心としたナチュラルな雰囲気の店内
老若男女に愛される、こだわりの「手練り練乳」
穏やかで物腰が柔らかな店長の片山さん
― 今日はよろしくお願いします。仕込み中のようですが、お時間は大丈夫ですか。
片山さん:よろしくお願いします。大丈夫ですよ、途中で少し抜けさせてもらうかもしれませんが。
― ありがとうございます。看板商品「手練り練乳」の仕込みをされているんですね。
片山さん:そうです。搾ったばかりの新鮮で濃厚なジャージー牛乳を火にかけて、じっくりじっくり練っていきます。その日の気候などによって、火加減や混ぜるスピードなどを調節するので、すべての工程を手作業で行っています。
― まさに職人技ですね。
片山さん:ありがとうございます。何度も試作を重ねてたどり着いた製法なので、ジャージー牛乳の魅力が詰まっていると思います。パンケーキやかき氷にかけたり、コーヒーに入れたり、手練り練乳の使い方はさまざまです。
― おいしそうですね。ヨーグルトやソフトクリームなど、ジャージー牛乳を使った乳製品はいろいろありますが、なぜ「練乳」をメインに選ばれたんでしょうか。
片山さん:練乳が一番ダイレクトにジャージー牛乳の味わいを感じてもらえると思ったからです。練乳の材料はジャージー牛乳と砂糖だけ。シンプルに素材の良さが生かせるんですよね。また、練乳ならスイーツだけでなく料理の隠し味に使えたり、無添加なので離乳食にも使えたり、若い方からご高齢の方まで、幅広くご家庭で楽しんでいただけています。
ショーケースに並ぶ「手練り練乳」。「78・84・96・プレミアム」と、練乳の粘度の違いが楽しめる
― 手練り練乳は、料理の隠し味にも使えるんですね。
片山さん:はい、ぜひ使ってみていただきたいですね。ジャージー牛乳特有の豊かで深いコクが出ます。手練り練乳は粘度によって4種類ありますが、「手練り練乳96」は、クリームパスタやシチュー、カレーなどの隠し味にぴったりです。
コーヒー、トースト、オムレツなど、練乳の楽しみ方はいろいろ
ショーケースの中にはところ狭しと手練り練乳のスイーツが並ぶ
― 「手練り練乳」を使った製品がたくさんありますが、人気商品を教えていただけますか。
片山さん:カフェでの一番人気は、「手練り練乳コーヒー」ですね。練乳の粘度を選べますが、みなさんどれにされるか迷ったり、食べ比べをしたりすること自体も楽しいようで。女性のお客様が多いですが、優しい甘さなので男性にも来ていただいています。あとはカフェメニューとして、パンケーキやフレンチトーストも人気がありますね。
「手練り練乳コーヒー」。濃厚なコクがコーヒーの苦みと相性ぴったり。自宅で飲むときは1杯につき30mlほどの手練り練乳を加えるのがおすすめとのこと
カフェでは岡山市北区にある「ディシェル」とコラボレーションしたパンケーキも楽しめる
― インターネット通販にも力を入れていらっしゃいますが、おすすめはありますか。
片山さん:「手練り練乳」はもちろんですが、「手練り練乳バター」もおすすめです。熱々のトーストやクロワッサン、ホットケーキにかけるとおいしいですし、オムレツなどにも合いますよ。スイーツとしては、「手練り練乳マカロン」や濃厚なミルクの風味が特徴の「手練り練乳プリン」も人気があります。
(筆者も後日、「手練り練乳バター」を自宅でいただきましたが、焼きたてのトーストにたっぷりのせるとジュワッと練乳のコクが広がり、止まらないおいしさでした。リッチな朝ごパンを楽しめます)
手練り練乳を使った品々。かわいらしいデザインパッケージは贈り物にも喜ばれる
ジャージー牛乳の魅力を引き出す、3人の「山の男」たち
― やはり蒜山高原ならではの味ですね。
片山さん:そうですね。私が蒜山生まれ、蒜山育ちなんですが、幼い頃から絞りたての牛乳を飲んで育ちきました。酪農学校にも通って勉強をして、私自身も牛を放牧していたこともありましたし、いつも身近な存在でしたね。新鮮なジャージー牛乳って、本当においしいんですよ。スーパーで売っているものとは全然違う。
― 「本当においしいんですよ」に熱量がこもっていましたね。
片山さん:そうですか(笑)。この新鮮なジャージー牛乳のおいしさを、もっと多くの人に味わってもらいたくて、自然そのままの味を生かせるように、無添加にもこだわっています。本質的なおいしさを知ってほしいですね。
ジャージー乳牛の飼育は、昭和29年頃から続く蒜山地域の地場産業
片山さん:そうですね、丸山はジャージー乳牛の飼育、眞山は経営、私はカフェの運営と、役割分担しています。搾りたてのジャージー牛乳の魅力を伝えたいという想いは皆同じですね。
左から眞山さん、丸山さん、片山さん。眞山さんと片山さんは同級生
― ジャージー乳牛の育て方にもこだわりがあるんでしょうか。
片山さん:「ストレスフリー飼育法」という独自の方法で牛を飼育しています。広い牧草地で牛が自由に過ごせるようにして、搾乳の時間になったら自分から牛舎に戻ってくる、という飼育方法です。いわゆる「つなぎ飼い」よりも、牛にストレスが少なく健康的とされていますし、より濃厚でジャージー乳を生み出せていますね。
― 牛にとっても良い環境ですね。
片山さん:そうですね。また、牛が食べるものも大切ですから、近くの牧草地で育てたこだわりの牧草をエサにしています。
蒜山を丸ごと、味わってほしい
蒜山高原について語る片山さん。店内は大きな窓がたくさんあり、明るい光が入り込む
― 「MOUNTAIN-MOUNTAIN」のコンセプトはどういったものですか。
片山さん:ジャージー牛乳のおいしさも知ってほしいですが、商品だけじゃなく、蒜山高原の雄大な自然をまるごと体感してもらいたいと思っています。店内も、目の前の高原風景を楽しんでいただけるよう窓をできるだけ大きくしていたり、建物にも真庭市の木材を使ったりしています。
大きな窓からは柔らかい光が注ぎ込む
― 店内の第一印象もそう思いました。照明に頼らず、穏やかな自然光で満ちていますね。
片山さん:おいしさがプラスされますよね。窓からの景色もごちそうの一部だと思っています。
― 高原の風景もまるごと楽しんでほしいというのは、店名「MOUNTAIN-MOUNTAIN」の由来にもつながっているんでしょうか。
片山さん:そうですね。蒜山高原の自然を知ってもらいたい、味わってもらいたい、という想いが込められていますね。それとこれは余談ですけど、携わる3人が眞山、丸山、片山で、「山」つながりということもあって。山の男3人で力を合わせて、蒜山の魅力を広めたいと思っています。
雄大な自然と新鮮な食材。蒜山暮らしの魅力
― 近隣に移住される方も増えているようですが、蒜山の暮らしの魅力はどのようなところでしょうか。
片山さん:一番は四季折々の移り変わりを楽しめるところですね。山の景色は、本当に四季によって変わります。紅葉は本当に美しいですし、雪も降りますし。夏場はそこそこ暑いですけど、30度くらいで湿気も少ないです。高原ですから過ごしやすいですよ。
― 野菜の生産もさかんですし、食も魅力的ですね。
片山さん:そうですね。私も家庭菜園でトマトやきゅうりなどを育てていますが、地域の採れたての食材が楽しめます。それと北上すればすぐに鳥取県、島根県なので、山の幸だけでなく、海の幸や川の幸も楽しめますね。
蒜山エリアを盛り上げていきたい
― 今後、もっと力を入れていきたいことはありますか。
片山さん:うちの店だけでなく、蒜山エリア全体がもっと盛り上がるように取り組んでいきたいですね。まずはそのために、来ていただくお客様にジャージー牛乳のおいしさをしっかりお伝えして、自然の味やこの地域の魅力をダイレクトに感じていただけるよう、根っこの想いは変えずにやっていきたいと思います。
山々の季節ごとの移り変わりが美しい
ストップウォッチ片手に始まったインタビュー。
インタビュー中にアラームが鳴ると、それまで穏やかにゆったりとお話しをされていた片山さんが、「ちょっと失礼」と一言残し、仕込み作業をしにさっそうと駆けていく様子が印象的でした。
愛情を込めた職人の丁寧な手仕事と、新鮮で濃厚なジャージー牛乳から生み出される「手練り練乳」。
お取り寄せでおうちカフェを楽しむもよし、家族や友人にプレゼントするもよし。
さらに雄大な蒜山高原の空と大地を眺めながらいただくことで、味わいが増します。
自然の優しい味を体感しに、高原ドライブがてら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
真庭市産の椅子も、風景も、手練り練乳の味わいも、この場所ならでは
取材・文:楢崎 美香