[Uターン・Iターン・移住]
いーなかえーるは、岡山県北の
求人情報をご紹介します

岡山県北で求人広告をお考えの企業様

[Uターン・Iターン・移住]いーなかえーるは、岡山県北の求人情報をご紹介します

「顧客の悩み」を起点に、粘着技術で新たな価値を。

後編カモ井加工紙株式会社 代表取締役社長

鴨井 尚志

番外編

岡山県にある、カモ井加工紙株式会社 代表取締役社長 鴨井 尚志 - 岡山県北の求人情報サイト「いーなかえーる」さんに、お話を聞いてきました。

index

7社長になって、“自分には何もない”ことがわかった。

丸尾

カモ井加工紙の社長になられたのは何歳のときですか?

鴨井

満でいえば39歳。40歳になる年でした。

丸尾

まだmtはない時代ですよね。就任時は建築の養生テープとかが生産の主流だったのですか?

鴨井

そうですね。建築で使う養生テープが主流でした。
1995年、バブルがはじけた後ですから、ご多分に漏れず、カモ井の業績も落ち込んでいたんですよ。売上も50億ちょっとあった会社だったのが、当時42億まで落ちてしまいました。矢掛やタイに工場をつくって、大型投資した後だったので、『いつ潰れてもおかしくない』と後で会計士に言われましたね。

父親の病死がきっかけで社長になりましたが、経営学なんて学んだことないし、もう何も分からない状態なので、とにかく片っ端から経営とかビジネスの本を読み漁りました。でも本って過去から現在までのことしか教えてくれないんですよ。

丸尾

先々どうなるかという判断は自分がしなくてはなりませんね。

鴨井

だから一生懸命読んだ知識や情報をインプットしたときは満足感はあるけど、実際の経営にもってきたら、何も機能しないんです。とにかく40歳ぐらいの若造が突然社長になって、それも前社長の息子。まさに親の七光りなので、周りも「お手並み拝見」状態です。

ほかの役員の人も、父親と同じ世代の人たちなので、意地悪ではないけど「社長、どう決断するんですか?」ってそれ以外、何も言わない。そんな状況が何カ月か続いた時、「自分には何も能力がないんだ」というのを思い知らされるわけです。

営業には携わっていたけど、別にカリスマ的な売り上げをつくったことがあるわけじゃないし、経理の部署にもいましたが、簿記を極めているわけでもない。製造に行ってテープをつくれるのかといったら、つくれるわけでもない。ということは、会社の中で自分が突出してみんなに誇れるものって何と考えたら「何もねえや・・」となりました。(笑)

鴨井

自分は何も知らない、何もできない。なら、そこからスタートしようとなりました。
で、役員会のときに、「自分の無力さがよくわかったので、製造は製造、経理は経理、総務は総務、営業は営業と、皆さんの部門でちゃんと力が発揮できるように環境作りの手助けをします。ああだこうだ指図しないので、皆さん、一番いいやり方でやってください」と頭下げました。

役員には「あなたがそれに気付くのを待っていた」と言われましたよ。正直、「先に言えよ」って思いました。(笑)だって、会社が潰れるかもしれない時だったんですよ。
そんな経緯で、今でも社長から指示することは本当に少ないです。

丸尾

会社は30年スパンなどで、世代を越えて、脱皮していく上で、ずっと同じリーダーが引っ張り続けられるわけではないので、転換する瞬間というのは、とても大きいことなんだなと聞いていて思いました。

鴨井

気が付いた後は、本当に楽です。
会社の中でもそうだけど、例えばカモ井だけで解決できないことであれば、ほかの会社でもいい、どこかに「一緒にやりましょう」と声をかけることができるようになりましたから。だから、「できない」とか「知らない」ということは武器になるなと思います。

8経営者の仕事は、“社員のやる気をぶち壊さない”業。

丸尾

言われたように社員が活躍しやすい環境をつくることは経営者の仕事だと思いますが、鴨井社長は、どのようなスタンスでそれに向き合ってますか?

鴨井

よく「社員のやる気をどうやって引き出すか」と経営者は言いますよね。
でも、それはふざけた話だと思います。結局のところ、自分たちの言動をふり返ってみてください。

例えば、親が先走って「早く勉強しなさい」とか、「これやっちゃ駄目でしょう」とか言うと子供が「今やろうと思っていたのに」と不満を言うでしょ?それと一緒で、大体、我々経営者が社員のやる気をなくさせているんです。

丸尾

皆さん、結果や成果は出したいし、活躍したいと考えていますからね。

鴨井

そう。自分が頑張って成果を出せば、給料も上がる、ボーナスも増える、役職も上がっていくということは当然分かっているわけですから、社員はやる気が全くないはずがないんです。

大体、経営者が社員から出てきたやる気を、ポンっと叩いて引っ込めさせているんですよ。
だから経営者の仕事って何ですかと言われたら、「社員のやる気をなくさないようにすること」です。

丸尾

入社して早々休んだりするような社員でも、後輩ができ、環境が変わると頑張りだすようになるというお話を、以前になさっていましたね。

鴨井

そうです。小さくてもいいから責任を持たせれば、がむしゃらに頑張りだします。
そういう面で、やる気というのはみんな潜在的に持っているのに、大体上司がぶち壊しているんです。

92週間で1万4000人が訪れる、ファクトリーツアー

丸尾

mtファクトリーツアーを始めるきっかけは何でしたか?

鴨井

まず、ハエ取り紙の会社がファッショナブルなテープを作っているギャップをお客さんが面白がってくれているというところが1つ。それと、今、マスキングテープ(通称:マステ)と言われている業界には、競合が40社ぐらいあるんですね。その中で、すべて自分たちがちゃんと作って売っていますよって宣言できる会社は、カモ井だけなんです。

だから工場見学会ができる会社は他にないんです。これは差別化にもなるし、ハエ取り紙の会社がマステを作っているというギャップを不思議に思って興味を持っている人たちにも、昔からこういうものを作っていたんですよ、という歴史を見ていただきたいと考えています。また、こういう一地方都市でこんなことをやっているのも見てもらいたいと考えています。

丸尾

一貫生産しないと工場見学も自信を持ってできませんよね。

鴨井

普段、私たち製造業は塀とか壁の内側でものをつくっていますから、営業以外の人は外部との接点が非常に少ないですね。なので実際、我々から全国にいるお客さんのもとに回らなくても、全国からお客さんが来てくださる。そして社員とお客さんとが接触できるというのは、ファクトリーツアーを開催する意味として大きいですね。

丸尾

それは働いている人にとって、めちゃくちゃ面白いことですね。

鴨井

自分たちがつくっているものをどういう人たちが使っていて、どう感じているのかという事を、実際にお客さんと接することで感じることができますから、それはすごく大きいですね。

丸尾

個人消費者であるお客さまが直接足を運ぶメーカーというのは“本物”という感じがします。この見学ツアーは人数限定ですよね?どれくらいの方がこられるのですか?

鴨井

1日1,000人、開催期間2週間で1万4000人です。

丸尾

え?1万人ですか?すごいですね(驚)!!

鴨井

今年は5万人のご応募をいただきました。
1組で5人までOKなんですが、平均3人ぐらいで全国から来場されます。来場いただけない方も多数いらっしゃるので大変申しわけないです。

10岡山イノベーションスクールへの関わり。

丸尾

岡山イノベーションスクールというところに、僕も第1期生で参加させていただき、鴨井社長は、講師として登壇され、講演をいただきとても勉強になりました。
その他の講義にも参加されていたのが印象的でした。
(※岡山イノベーションスクール1期の講義は、大学教授、その他起業家や投資家などが担当)

鴨井

大きく2つ理由があって、1つ目は、自分たちの会社の営みに関して、様々な規則があり、経済原則や原理に従って動いているわけじゃないですよね?だけど、それを経済学や経営学の教授というのは、いろんな形で、いろんな角度から分析して、このルールに従っているとか、この原理に合っているとか、いろんなことでちゃんと自分たちがやってきたことを改めて分析してくれるんですよね。自分たちがおこなっていることが理にかなったものなのか、あるいはそうでないものかという見極めができるのが、非常にありがたいと思ったのが1つ目の理由です。

もう1つは、イノベーションということで、若い人たちが頑張っているのって、めちゃくちゃいいじゃないですか。それを目の前というか、できるだけ近いところで、その熱量を感じたかったんです。自分が大学の先生に教わるのと同時に、仲間じゃないですけど、スクール生の人たちが頑張っている姿を見るというのは、自分の中でも刺激になるし、「頑張れー!」と応援もしたくなる。その2つの理由です。

11すべては、社是の「程(ほど)」から。

丸尾

カモ井加工紙、あるいは鴨井社長ご自身として、大切にされていることはありますか?

鴨井

特段、皆さんに胸を張って言うことはないんですが、あくまでも、社是の「程(ほど)」をどれだけみんなでちゃんと守れるかだと思います。
言動の物差しとしてちゃんとやっているかどうか、そこだけです。
・身の程を知りましょう
・身の丈を知りましょう
・謙虚な気持ちで事に当たりましょう
・自分の分(役割)をちゃんと知りましょう
そうすれば、和が生まれ、能率も上がりますという意味です。

丸尾

まさにそれがいろんな行動につながっていくというところの根幹ですね。

鴨井

「程」という言葉は、先々代の社長が口癖のように言っていたのを、先代社長が就任したときに社是にすると決めたらしいんです。私は当然、カモ井に入るまでは知りませんでした。自分の人生のもとになっているのは、やっぱり「程」でしょうね。

「顧客の悩み」を起点に、粘着技術で新たな価値を。

190328_112431

カモ井加工紙株式会社

カモ井のハエトリ紙からスタートし、創業から一貫して“粘着”の商品開発を行う。
2008年からマスキングテープ『mt』シリーズの販売を開始。いまやマスキングテープのシェア9割を誇る。お客様のニーズにこたえ続けるために、日々研究開発を進められています。

お話を聞かせていただきありがとうございました。もうすぐ創業100年を迎える老舗企業として、どの時代であってもカスタマーペイン(顧客の悩み)を捉えて、新たな製品を作っていく、そのものづくりの基本姿勢を教えていただきました。また、経営者として「社員のやる気をぶち壊さない業」として、社員それぞれが活躍できる環境づくりイコール「任せる」ということ、経営者としてのそういった姿勢も学ばせていただきました。鴨井さんは、まさに「程(ほど)」を体現されているかえーる人でした。

  • 取材日:2019年3月28日
  • 撮影地:カモ井加工紙株式会社
岡山県北で
はたらく
くらす
かえ~る人