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持続可能な社会をつくる。これからの林業。

院庄林業株式会社 代表取締役

武本哲郎

津山市

院庄林業株式会社の代表取締役 武本哲郎さんにお話を聞いてきました。

 

#これからの林業 #住宅づくりの変遷
#海外と日本の林業 #50年後の森
#日本の森の健全化

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1津山から全国へ。名だたる製材・集成材メーカー「院庄林業」

丸尾

院庄林業株式会社の代表取締役 武本哲郎さんにお話を伺います。院庄林業は岡山県北では知らない人はいない企業ですが、改めてどういった会社でしょうか?

武本

昭和30年の創業以来、岡山県津山市を中心に林業を営む会社です。
一般住宅向けの柱や土台など、構造部材の製造をしています。もとは65年ほど前に岡山県北の奥津町などで木を切って、製材、販売することから始まりました。

丸尾

一般住宅向けの柱を多くつくられているのですよね?

武本

そうですね。日本で住宅の柱などにおいて、乾燥材(含水率を一定以下になるまで乾燥させた木材)を世の中に広めたという自負はあります。集成材(※)の原材料で10種類あり、出荷しているものは、サイズや樹種、お客様が求める仕様により2300種類ほどになります。お客様が求める品質や用途に合わせて、カスタマイズして、欠品なく提供していくことを得意としている会社です。

※集成材(しゅうせいざい)とは、小さく切り分けた木材を乾燥し接着剤で組み合わせ人工的に作られた木材のこと

丸尾

樹種はどのようなものがあるんですか?

武本

樹種はいろいろあるのですが、国産材だとヒノキ、 輸入材だとヨーロッパのホワイトウッド(スプルース材) 、レッドウッド(アカマツ材)の3つがメインです。

丸尾

国内の業界でいうと、院庄林業はどれくらいの規模になりますか?

武本

ヒノキの製材量、そして集成材の生産量でいうと、全国2番目くらいかと。

2これまでの住宅向け構造部材の変遷

丸尾

現在まで、業界としては、どのような変遷がありましたか?

武本

製材から始まり、1970年代後半から“プレカット”に対応しました。

それまでは、大工さんが柱を測って、土台となる木材一本一本を図面に合わせて加工し、現場で組み立てるような流れで作業をしていました。それが現在は95%が機械化し、大きく時代は変わって行きました。

 

木材はもともと水を含んでいるので、柱として使っているうちに水が抜けて乾くと、ねじれたり、割れたり、縮んだり、歪んだりします。そのため、水を人工的に乾燥できるようにする工程が1980年代くらいから本格化されました。

 

※プレカットとは、施工前に現場で使う木材を工場で機械的に加工すること

丸尾

基本的なことなのですが、乾燥材がなかった頃は、家を建てる場合はどうしていたのでしょう?時間が経つと歪みなどがでてくるのですよね。

武本

製材して大工さんが組み上げて、それを3ヶ月間ぐらい建築現場においておきます。そしてしばらく歪みを出させて、その後に再度調整をしていたんです。

そのため一軒の家を建てるのに大変時間がかかっていました。今は乾燥化が進み、プレカットもできたので、最短で2〜3ヶ月で家が建てられるようになりました。

そして“プレカット”と“集成材”のシェアが高まり、性能上のばらつきがなくなってきました。そして30〜40年に比べてコストダウンもできるようになりました。

丸尾

昔は大工さんが木を切って柱を一からつくっていたのを、“プレカット”で行うようになったり、“集成材”ができたことで、住宅を作るプロセスが大きく変わったのですね。

武本

集成材を使わない、無垢材がメインの家だとクレームも増えるので、より乾燥度の高まった木材を使いたいとシェアが広がりました。プレカットは現場の負担を減らすだけでなく、機械ならではの合理的な作業フローで、信頼性の高いスピーディーな加工を可能にします。また、納入まで木材が適切に保管されるため、煩雑になりがちな現場での管理状況も改善されるので、住宅建築には欠かせない存在です。

3木材が建築現場に届くまでの流れ

丸尾

木材の含水率はどれくらいあるものなのでしょう?

武本

含水率は、重さの比率で表す指標なのですが、例えば生えている木の約30%は水分です。夏場は水を吸って成長するので80〜120%になります。ほぼ木材と同じぐらいの水分量を持ったりもします。私たちはそれに人工的な乾燥を行い、含水率を15%に減らします。

丸尾

その乾燥工程にどれぐらいの時間がかかるものなのですか?

武本

木材の種類などによって変わりますが、早くて3日、長いと2週間かかります。

丸尾

住宅は身近にありますが、様々なプロセスを経て、柱は建築現場に行くのですね。院庄林業さんが担われている工程をもう一度一通り教えて下さい。

武本

国内の「木を伐採」するところから始まり、工場で「製材」、「乾燥」して無垢材を製造します。「集成材」の場合は、ヨーロッパから板(集成材を構成する板)を輸入し「集成材」工場へ行き板を「接着」し集成材を製造します。それら無垢材・集成材は「プレカット」工場で、求められるサイズに加工して「建築現場」へ行きます。

4ヨーロッパに対して、日本の林業はまだまだ発展途上

丸尾

日本の林業の状況は、世界と比べるとどのような感じですか?

武本

そうですね。ヨーロッパは林業先進国です。それに対して日本で使用する木材の約3分の2は輸入である状況です。日本では、年間で約7,000万立方の木材を全体で消費しているんですが、そのうち日本産の木材消費量が約3分の1なのです。木の成長量自体は同じなので、その理由としては、全体的に山に入ったり、製造したりするコストが高く、圧倒的に生産性が悪いことが挙げられます。

一人当たりの1日伐採量で比較すると、日本で平均は4〜5立方程度で、オーストリアで20立方ぐらい、フィンランドやスウェーデンは200立方と全然違うのです。
また、例えばオーストリアで木を切っている人の年収は700万円なのに対し、日本だと年収300万以下と収入も大きく違います。

オーストリアで林業をしている人は、バカンスでイタリアに行ったりしますからね。(笑)

丸尾

そこまで違いがあるとは・・・(驚)。

武本

工場での原木価格は日本もヨーロッパも同じなのに、何が違うかというと、立っている木の価格が違うんです。日本だと一本1立方たった1,000円、ヨーロッパだと5倍になるから5,000〜6,000円。補助金をつけても年収が300万以下と低いので、なかなか厳しい状態です。これから日本の林業のあり方も変化が必要なのです。

5これからは大規模建築も木造に

丸尾

原木に付加価値をつけて、林業が今後最適化されるとよいですね。

武本

SDGsなど、時代背景としては背中を押してもらっている環境だと思います。そして、これから建築物を木造化していくことも持続可能な社会づくりに繋がると思うので、力強く進んでいきたいですね。

丸尾

大規模な建物だと、木造で何階建てまで建てられるのですか?一般の木材住宅だと1〜2階建てのイメージですが。

武本

木造4階建ては可能です。また、国内でも13階建なども少しずつ始まってますよ。ヨーロッパは25階建てなどもありますね。

丸尾

木造で高層化も可能になっているのですね!(驚)面積も広いものが可能になっていますか?

武本

山形には津山文化センターくらいの広さの木造建築物もあります。イギリスにあるGoogleのヨーロッパ本社は木造でかなりの大きさですね。

6日本林業を発展させるために必要な3つのこと

丸尾

以前、院庄林業としてクラウドファンディングにも挑戦されていましたが、日本の森の健全化をし、日本産の木材を使用していくには何が必要でしょうか。

武本

そうですね・・3つ必要なことがあります。

 

1つ目は、マーケット側に日本木材の良さをアピールし、建築を木造化していく必要があります。木造を使いたいけど、やり方がわからないという設計士さんもいらっしゃるので、そういうところへの働きかけも大切です。

 

2つ目は、生産性を高めて、伐採から現場へ行くまでのコストダウンの仕組みを作ることです。

 

3つ目は、伐採後に新しい木を植えていくことです。伐採面積の2/3がそのまま木を切って終わっている現状にあります。天然更新でも木は生えるのですが、きちんと管理された林業にはならないので、木を切った後はきちんと植えていくのが当たり前になる社会づくりをしていく必要があります。

丸尾

ちなみに、今生えている木は、いつごろ植えられた木なのでしょうか。

武本

戦後ですね。木は50〜60年が伐期になります。そのサイクルで考えていかないといけないのです。現在、日本には新しい樹齢の木があまりなくて、今切らないといけない木がたくさんあるのですが、コストパフォーマンスが悪く切れない状態なのです。

 

院庄林業が行ったクラウドファンディング
3000本の檜を植えよう!みんなでつくる50年後の森
https://camp-fire.jp/projects/view/304592

7何かを成し遂げるには、目の前にあることを大切に

丸尾

これから院庄林業としてはどのようなことをしていきたいですか?

武本

より木材を使った建築を世の中に伝えていきたいですね。それが社会に貢献するミッションだと考えています。林業業界を変えていけるよう、強弱をつけながら世の中のページを1枚ずつめくる活動に挑戦していきたいですね。

丸尾

最後に、武本さんが大切にされている言葉は、なにかありますか?

武本

名刺の裏にも載せているのですが(笑)スティーブジョブスの言葉ですね。

 

“The only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking. don’t settle.”

「よい仕事をする唯一の方法は仕事を好きになること。まだ、それを見つけていないのなら、探すのをやめてはいけない。安住してはいけない。」

 

そして、
何かを成し遂げようとする唯一の道は、今目の前にあることを愛すべきだと思って、何事も他責ではなく自責で考えようと心掛けています。

これまでを振り返ったときに、目の前にあることを全力でやってきたから、今があるという風にしていきたいと考えています。

持続可能な社会をつくる。これからの林業。

院庄林業株式会社
院庄林業は、昭和30年の創業以来、岡山県津山市を中心に林業を営む会社です。岡山の自然が育んだ国産桧の天然無垢材『匠 乾太郎』をはじめ、高品質なシャチのマークの集成材、ワークフローの効率化をサポートする材木のプレカットなど、木造建築現場に安心と信頼をお届けしています。

 

3000本の檜を植えよう!みんなでつくる50年後の森
https://camp-fire.jp/projects/view/304592

 

院庄林業株式会社で募集中の求人情報。

お話を聞かせていただきありがとうございました!私たちが何気なくふれている家の柱や木材には、時代と共に変化してきた製造プロセスがあり、これからは持続可能な社会を考えるうえで、切り離しては考えれないことがあると学びになりました。また、今回伺った素晴らしいロケーションの山荘(岡山県苫田郡鏡野町)は、お客様を招いたり、山や現場をみてもらって、昼食をしたりするのに使用しているそうです。月に一度この山荘でリモートワークも試みてるとのこと(うらやましい!)。武本さんは岡山から東京、岐阜からのUターンで、これからの日本の林業を変えていく、かえーる人でした。

 

  • 取材日:2021年1⽉15⽇
  • 撮影地:岡山県苫田郡鏡野町
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