[Uターン・Iターン・移住]いーなかえーるは、岡山県北の求人情報をご紹介します
明日の自分は今日の自分がつくる
後編株式会社オリジナルキューチ
豊福 祥旗
岡山県にある、株式会社オリジナルキューチ 豊福 祥旗 - 岡山県北の求人情報サイト「いーなかえーる」さんに、お話を聞いてきました。
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5生産者の物語や情熱、想いを知ってもらう場づくり。
後編です。前編はこちら 株式会社オリジナルキューチ 豊福 祥旗(前編) |
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丸尾 |
やっぱり店舗で直に出すということは、お客さんの顔も実際に見えるということだと思うんですけど、そこは通常の流通とは大きく違うところですよね。 |
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豊福 |
もともと肉用牛業界というのが、お客さんの顔を見ることがほぼできない業界です。やはり生きた動物をまず屠殺(屠畜)して解体するという作業が必ず存在するんですよね。それは僕たちじゃできないですし、もう十数年前にBSEという牛の病気の件で、規制がまたさらに厳しくなっています。 要は「安心安全なものしか食べちゃいけないよ」というもとで、きっちりと牛に個体識別番号というのが全部ついているんですよ。牛は、10ケタの番号ですべて管理されているんです。だから人間と同じぐらい実はきっちりと、どこの牧場からどこの牧場に行ってとか。 |
丸尾 |
マイナンバー的な感じですか!?(驚) |
豊福 |
そうですね。本当にそんな感じで、牛1頭レベルですべて管理されているんです。ほかの動物はそんなことはあり得ないですから。すべての牛に管理番号がついていて、それがないと殺すこともできないし、何もすることができないという状況のものなんですけど、それがついていて、決められたところじゃないと屠殺(屠畜)ができない状態になっていますね。 なので、まずその時点でうちから手が離れる。さらに競りにかけられるので、僕たちが特別手を下すことなく競りに落とされて、別の業者さんに買われていく。その買われたものも、その人がいきなり小売店舗で販売するんではなくて、大体はお肉にばらされて、さまざまな用途に合わせた飲食店だったりとかにどんどん行っちゃうので、誰がどういうふうに食べているのかなんて…。 |
丸尾 |
絶対見えないですね。 |
豊福 |
そう。なのでそれを自分のお店だと、お客さんと接したり、顔が見えるようになります。そして逆にお客さんが、もっとこうだったらいいのにねとか、こういう部位を食べたいよねとかというのもまた、生産面にフィードバックすることもできるという面もあります。 僕はこれからの農業は、お客さんに合わせて生産するものもつくらないとダメだと思うし、つくれる技術が日本にはあると思っています。ただ技術力が高いで終わりじゃなくて、お客さんのために合わせていく技術力というのが、これからの日本の農業の課題なのかなとちょっと思ったりはします。というか、それができるんじゃないかなと思っているんですけど(笑)。 |
丸尾 |
そう考えたら、お客さんからの情報も吸い上げて、また商品にして提案していくという、その双方向で必要な場所としてということもやっぱりあるんですね。 |
豊福 |
そうですね、大きいですね。なので、もちろんなぎビーフというのが、まだまだ皆さんに全然浸透していないので、それを皆さんに知ってもらうというのも1つですし、知ってもらうだけじゃなくて、その向こう側だったり、物語だったり、何か生産者の情熱、思いというのも一緒に知ってもらうのがすごく重要かなと思いますね。 |
6地域の良さを口に出して伝えるのはすごく難しい。
丸尾 |
1度、県外に出られて、こちらに戻ってきたんですよね? |
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豊福 |
そうです。生まれはここ勝田郡奈義町で、大学進学の時に熊本に行って農業や、結構いろいろなことを学ばせてもらいました。高校は津山です。 |
丸尾 |
そして、卒業とともに戻ってこられたのですね。 |
豊福 |
そうですね。それこそいろんなところで就職しようとか、いろいろ思っていたんですけど、大学のときにはもちろん、この家の稼業を継ごうというか、農業に従事しようと思って帰ってきました。 その頃は結構、適当じゃないですけどそんなに考えずに、家の農業というのも、考えれば考えるほど何か面白いし、やりがいがあるし、「ちょっとやってみようか」みたいな感じだったけど、やればやるうちに、いろいろな疑問も持つようになりました。 九州もそうですけど、僕がいたのは熊本の阿蘇というところで、すごく自然豊かですごくよい場所です。町からも車で45分ぐらいだし、町もあって、山もあって、自然もあって、そこでほんとに何もなければ永住ぐらいの(笑)。 本当にそのぐらい、よいところでした。それでもそこに住み続けるのとはやっぱりちょっと違っていて、僕はやっぱり地元好きなんですけど、変な話、自然とか町とか、いいところをとっていくと、僕は熊本のほうがよいところがたくさんあるなというのは、正直思うところなんですよ。 けど、やっぱり住むとか、落ち着くとか、慣れ親しむとか、気兼ねないというのが岡山なのかなというか。見方は中途半端なんだけど、ただ、いろんなものがきちっとあるし、居心地のよさというか、何かそういうのを知らず知らずのうちに、子供の頃から頭の中にあったのが、今もずっと続いているんだろうなというか。 このよさを口に出して伝えるのはすごく難しいけど、伝えていかないといけないんだろうなという、何かちょっとそういうところには今来ていますね。だから僕も今、岡山に帰ってきているんだろうなと思います。 |
丸尾 |
実際に帰ってきてやられているのも、そもそも故郷だからかもしれないですね。 |
豊福 |
そうですね。なので、ここでしかないし、よく物語とか、商品力とか、いろいろ言われるんですけど、本当に奈義町で生産していて、ここでしかないものだったら、僕はそれで十分、どんなプロセスでもつくっていけると思っています。 あとはこの奈義町をどんな町にしていくとか、県北をどんなふうにしていくとか、どんなよさを引っ張ってこれるかだけだと思うので、何か今そういう作業を一生懸命しているようなところもあるのかなとは、個人的には思っているんですけど。 |
7この町の5年後、10年後を目指して。
丸尾 |
では、豊福さんが、これからチャレンジしていきたいことを教えてください。 |
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豊福 |
僕はやっぱり県北が好きなんです。その「好き」は、言葉ではなかなか言い表せなくて、かといって、「来てみろよ」と言うほど充実しているかというと、微妙だとも思っているんですよ(笑)。案内はもちろんできるし、いろいろ楽しいところにも連れていけるけど、胸を張って、「めっちゃええとこだろう」とは、多分僕、口が裂けても言えないと思うんですよ(笑)。 なので、それを言えるようにしたいというのは思うんですよね。だから僕は、それは地元奈義もいえるし、津山圏域含めての美作国じゃないですけど、このエリアもそうだし、岡山全体で言えることかもしれないですし、移住する人も、旅行する人も、やはり来て、岡山はこれだからいいよねというのが、それぞれの分野できちっと言えるような形になれたらいいのかなと。 そのうちの1つとして、Quchiだったり、なぎビーフだったり、農業だったり、そういうのが伝えられるようにというか、1つの輪の中に入れるようになれればいいかなと思っているんですよね。だから、僕が発信するのもそうだし、ほかの人が岡山っていいよねと言ってくれた、その1つの輪の中にQuchiがあるということを創造できれば、僕は嬉しいなと思いますけど。 |
丸尾 |
最後に、豊福さんが大切にしていることを教えてください。 |
豊福 |
「明日の自分は今日の自分がつくる」というのが座右の銘です。人は1日じゃ変われないし、「ローマは一日にしてならず」と言いますけど、それと同じように、町も自然も未来も、多分1日で変わることはないと思うんですよ。 けど、明日の未来は必ず今日の自分がつくっていくんですよね。今日例えば、残業して1時に寝た。睡眠時間が3時間しかないわ。次の日に引きずるのも前日の自分がつくっているし、ここで終わるはずだった仕事を「まあいいわ」といって次の日にもちこして、次の日に倍の仕事量があるのも、前日の自分がつくっているし、多分その積み重ねだと思うんですよね。人間が成長するのも、町が成長するのも。 この田舎が残り続けるのも、多分、本当に爆発的な資金が入ってきて、1兆円でもぽんと落としてくれれば別かもしれないですけど、そうじゃない限り、劇的な変化って起こらないと思っているので、自分が本当になりたい5年後、10年後、この町がこうなってほしいなという5年後、10年後を目指して、今日は何ができるんだろうという、大それたことじゃないけど、何か一歩ずつでも付箋を貼りながら、一歩ずつでも、しょうもないことでもいいから進めたらいいなというのは、毎日思っていますね。 |
丸尾 |
お子さまや次の世代なんかが、農業に関する感覚はこれから変わってくるのかなと、お話を聞いていて思いまいした。 |
豊福 |
そうですね。僕の思いというのは、やっぱり未来に「農業ってかっこいいな」と思ってほしいというか。最初、高校のときに掲げた目標があって、「多分自分の代では無理だろうな、けど、子供の代にさせたいな」と思った漠然とした目標があって、農業者がキャビンアテンダントと当たり前に合コンできるように(笑)。 「当たり前に」ですよ。ほかのひとがおかしいなと思うわけでなく、普通に「明日合コン、キャビンアテンダントとするけど、どうする?」みたいな感じで、農業者が、子供が言っていたら、それって絶対かっこよくなっているよなと思って。 そのくらいに持っていけるためには、どういうふうに農業をしていかなくちゃいけないのかなというのも、変な話考えながらじゃないけど、そのぐらい農業ってかっこいいよなって思ってもらえるように変えていけたらなと思います。 それは別にお金持ちになるとか、モデルが農業するとか、いろんな動線もあるかもしれないし、どれが正解かもわからないけど、でも、それは全体的な農業という底上げをしないと無理だと思うんですよ。 なので、そこをちょっと目指して、農業は本当に、くわ1本あればできるものなので、新規就農だったりとか、移住した人がすぐ始めることができるのも農業だと思うんですけど、体を動かすだけじゃなくて、一緒にやっぱり頭も動かして、農業をしてくれる人が増えてくれたら嬉しいなとは思っています。 |
明日の自分は今日の自分がつくる
肉牛の生産~牛肉がお客様のお口に入るまでをトータルコーディネート。奈義町産牛肉ブランドなぎビーフを多くの人に知ってもらい、牛肉で輝く岡山県にします!農業の楽しさ、つらさ、未来、希望、価値を皆様と共有し進んでいけたらと思っています。
Original Quchi(オリジナルキューチ)の由来は、「究極の地産池消を体現すること」、「家(ウチ)のクオリティーを高め、発信すること」の二つの意味が含まれています。
飲食を通し農業のポテンシャルを再構築・発信し、精肉加工品を通し様々な時・物が繋がる仕組みを作っていきます。
お話を聞かせていただきありがとうございました。お話を伺う中で、私たちにお肉をはじめとした食べ物についてははとても身近なことであり、大切なことです。しかしそれについてあまり知らないのだと感じました。地域の生産物が生まれる過程を知ることは、食を豊かにしていくことであり、今後地域を盛り上げていくきっかけになるのではと感じました。豊福さんは、熊本からUターンのかえーる人でした。
- 取材日:2016年4月6日
- 撮影地:株式会社オリジナルキューチ