[Uターン・Iターン・移住]いーなかえーるは、岡山県北の求人情報をご紹介します
懐かしさと、新しさ。世代を超えて家族で味わう田舎の魅力。
目次
あるの森(ARU NO MORI)
津山市から高速道路で北上すること約1時間。西粟倉村(にしあわくらそん)という自然豊かな村に、その心地良い空間はあります。
あるの森(ARU NO MORI)入り口
「あるの森(ARU NO MORI)」は、日本人とタイ人の夫婦が営むカフェ兼ゲストハウス。
「こんなところにお店があるのだろうか」と訝しむのも一瞬。愛らしい看板を目印に一歩店内に踏み入れると、築120年以上の古民家を改築したセンスのいい空間は、懐かしさとともに、どこか新鮮なあたたかさで我々を迎えてくれます。
じつはこのカフェ兼ゲストハウス、2020年の5月に、オーナー夫婦が兵庫県から岡山県へのIターンで始めた、まだ新しいお店です。
新型コロナウイルスの影響を受けつつも、岡山県内の方をはじめ多くの人々に愛される「あるの森」。その魅力をさらに多くの方に届けるべく、今回、オーナーの小林辰馬さんとペンさんに、お話を伺いました。
「あるの森」を運営する小林辰馬さん(右)と妻のペンさん(左)
古民家で提供する和泰折衷という独自の文明
ーー「あるの森」は、想像以上に自然豊かな環境にあります。日本的な古民家でタイ料理を食べられるというのが、新鮮ですし、魅力的ですね。
辰馬さん:ありがとうございます。じつはこの空間を最初から狙っていたわけではないんですが、たまたま物件が空いたので、ここに決めました。結果、タイ料理と日本家屋による和泰(わたい)折衷な雰囲気が、却って良いギャップになったのだと思います。
ペンさん:タイ料理屋自体が岡山にはあまりないので、日本の方にとって馴染み深い空間で提供することを通して、よりタイ料理を身近に感じてもらえたら嬉しいです。
タイ料理を楽しむことができる囲炉裏の間
ーーこの物件との出会いにより、兵庫県からの移住を決められました。
辰馬さん:自分は兵庫出身、彼女はタイ出身で、確かに西粟倉村には縁もゆかりもありませんでした。
ペンさん:じつは、彼のお母さんと私とで、お店の計画をしていたんです。もともと私はインバウンドの仕事をしていたんですが、その延長でいつかホームステイをやりたいという気持ちがあって。東京、大阪に行く観光客は多いけど、田舎で畑に触れたり、そういうところに日本の本当の魅力があると思っていました。
辰馬さん:それを彼女が母親に話したら、母親がこの物件を見つけてきたそうです。自分はあとからこの話に乗っかりました。結婚して2年ですが、彼女によって色々と人生が変わっていくので、僕はこの結婚を玉の輿だと思っています(笑)
キッチンにて、夫婦でのしごとの様子
家族でつくる人気メニューと、世代を問わず楽しめる空間
ーーペンさんとお母様の仲の良さ、そして辰馬さんとペンさんの素敵な関係性が伝わってきます。
ペンさん:お母さんにはとても仲良くしてもらっています。このお店も手伝ってもらっていて、人気ナンバーワンメニュー「自家製グリーンカレーピザ」のピザ生地も、お母さんが作っているんですよ。
辰馬さん:「自家製グリーンカレーピザ」は、母のピザ生地に、ペンのグリーンカレーをのせ、さらにたっぷりのチーズをかけて焼き上げています。そのままで食べたら辛いグリーンカレーが、チーズでまろやかになるので、お子様にもおすすめのメニューです。このメニューを出しているのは、もしかしたら全国的にもうちくらいなんじゃないかな。
「自家製グリーンカレーピザセット」(¥1,380)は、大人気メニュー
生春巻きなどのサイドメニューも絶品
ーーはじめて食べましたが、たしかにまろやかで、カレーの香りと生地の甘みとが絶妙でした!まさにご家族でつくる人気メニューですね。
ペンさん:「自家製グリーンカレーピザ」に限らず、お子様用のメニューもあります。
辰馬さん:色々なメニューを用意しているので、なるべくご家族で、この空間と料理とを楽しんでいただきたいですね。
メニュー表に載っているのは、なんとペンさんによるオリジナルイラスト
ーーファミリーでのご利用は多いですか。
辰馬さん:そうですね。世代問わず利用していただけることは嬉しいです。例えばこういう古民家だと、世代によって別の見え方をします。若い方には新鮮に映るし、お年を召した方は懐かしく感じられたり。
ペンさん:子どもにとっては、ただ走り回れる自由な空間だったりね。
辰馬さん:田舎だからこそ味わえる楽しみといえるかもしれません。そういう幅広い見方を通して、家族で過ごすことの素晴らしさをより味わっていただけたら幸せです。
囲炉裏の灰模様も、家族での会話のネタになりそう
「あるの森」がある西粟倉村
ーー新型コロナウイルスの影響で、海外からのお客様は来られなくなりました。
辰馬さん:もともと「あるの森」はゲストハウスをメインにと考えていたんですが、新型コロナウイルスの影響で、当初サブの予定だったカフェが前面に出ることになりました。ただありがたいことに、国内のお客様には宿泊でもご利用いただいています。県境なので、岡山だけじゃなく、関西や中国地方の方など。西粟倉は林業が盛んなので、そこで働く方のご予約も多いです。
ペンさん:カフェも沢山の方に楽しんでいただいています。SNSをきっかけに、「あるの森」を目指して西粟倉に来ていただくことが増えました。
古民家ならではの雰囲気が遠方のお客様にも好評
ーー「あるの森」をきっかけに、西粟倉村に人が増えるのは嬉しいですね。
ペンさん:自然がいっぱいの西粟倉が大好きなので、その魅力を知ってもらいたいですね。
辰馬さん:西粟倉は、じつは移住者が多く、自分たちを含め県外出身の人も多いんです。そういう人たちと、岡山県西粟倉村で生まれ育った人たちとが手を取り合って、これからの村のためになることをできたらと思います。
カフェスペースに並ぶ、辰馬さんの好きな本も要チェック
体験型の宿泊施設としての、今後
ーーこの4月に、体験型のイベントを始められました。
辰馬さん:先ほど妻が話したように、自然が多い西粟倉が僕らも好きなので、この自然を生かすアクティビティを企画したかったんです。自分たちもまだ手探りですが、これから充実させていきたいと考えています。
ペンさん:まずは岡山県周辺の方に楽しんでいただいて、そのうちに東京や大阪、そして海外の方にも体験してもらえるようになったらいいなと思います。カフェも、いつも試行錯誤ですが、「タイ料理が好きで来た」「本場の味を久しぶりに味わえた」と言ってもらえると、やっぱり嬉しい。西粟倉村ならではの古民家×本格タイ料理でできることをもっと色々考えて、これからも提供していきたいです。
スイーツメニューも豊富。
写真はタイのデザート「ブアローイ」
温かいココナッツミルクでホッとするひとときを
『ある』の森
駐車場前の看板
ーーさいごに、お店の名前(あるの森/ARU NO MORI)の由来を教えていただけますか。
辰馬さん:これには二つ意味があります。まず一つは、この場所には、時代のふるいにかけられなくなった瓦屋根や囲炉裏、その他沢山の日本の良さが『ある』ということ。
そしてもう一つは、先日亡くなった愛犬の名前が『アル』だからです。
ペンさん:数週間前に寿命で亡くなりました。お母さんは「一番出来の良い息子だった」と言っています(笑)看板犬だったアルが、お店の名前としてずっと残ってくれるのは、とても心強いです。
ゴールデンレトリーバーのアルくんは、これからもずっと「あるの森」の看板犬
辰馬さん:そういう意味を込めた『ある』に、西粟倉村の大きな魅力である『森』をくっつけました。ここに『ある』ものに出会いに、是非この西粟倉村にお越しいただけたらと思います。
村を挙げて「百年の森林構想」を掲げる、自然豊かな美しい西粟倉村に佇む、一軒の、あたたかい古民家。そこは、家族でつくる本格的なタイ料理と、しっかり者でチャーミングなペンさんと、音楽と文学が好きな辰馬さんがいる、心地良い空間です。空間を含めての料理、空間を含めての宿泊だということを、筆者は「あるの森」取材を通してあらためて感じました。
大きな深呼吸をしたくなったら、何気なく一泊してみるといいかもしれません。いま欲しい何かが、きっとそこに、『ある』でしょう。
「あるの森」から望む西粟倉村の自然豊かな景観
取材・文:山田ルーナ