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移動の先にある笑顔のために。介護タクシーから変える、移動の当たり前。

株式会社SWAG 介護タクシーしえんた 代表

寺坂実成

津山市

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#民間救急
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#起業
#人生を豊かに

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1人生を豊かにするための移動を支える

丸尾

まず、「介護タクシーしえんた」を運営されている、株式会社SWAG(スワッグ)について教えてください。現在はどのような事業をされているのでしょうか。

寺坂

主に「介護タクシー」と「民間救急」の2つの事業を行っています。

 

介護タクシーは、高齢の方や障がいのある方など、一人での移動が難しい方に利用していただくサービスです。介護保険外のサービスなので、通院や転院だけでなく、買い物や旅行、冠婚葬祭などにも利用していただけます。

 

一般的なタクシーに近い感覚で、その人が「行きたい」と思う場所へ行くために使ってもらえるんです。

丸尾

「介護タクシー」という名前から、どうしても通院や施設への移動を想像しますが、それだけではないんですね!

寺坂

そうなんです。この前は長崎まで行きました。この津山地域で手術をされた方が、「リハビリは家族のいる地元でしたい」ということで、長崎の病院までお連れしました。東京など遠方へ行くこともあります。

 

僕らが本当にやりたいのは、通院や転院だけではなくて、その先なんです。
例えば最初は病院への送迎で利用してもらったとしても、次に使っていただく時には、「買い物に行きたい」とか「家に帰りたい」とか、そういうプライベートな時間にも関わっていきたい。

 

家族に近いような立ち位置になれたらいいなと思っています。

丸尾

ホームページを拝見して印象的だったのが、「外出はただの移動ではなく、人生を豊かにする大切な時間」という考え方でした。
実際に、以前介護タクシーしえんたを利用された方が「孫の部活の試合を見に行きたい」と相談されて、それを実現されたこともあるそうですね。

寺坂

ありましたね。試合を見ている間も、体調に変化がないか見守ります。そういうところまでサポートできるのは、介護福祉士がいるからこそだと思います。
移動できないというマイナスをゼロに戻すだけではなくて、その先の「楽しい」とか「やりたい」を実現したいんです。

 

誰だって事故に遭って、突然自由に移動できなくなる可能性があります。でも、頭の中には「これをしたい」「ここへ行きたい」という気持ちが残っている。そんな時に、「支援があればやりたいことができる」という世の中であってほしいと思っています。

2ドライバー全員が介護の資格を持つ。安心して任せてもらえる体制づくり

丸尾

介護福祉士がサポートいたしますと書かれたハイエースの後部ドアを開ける寺坂実成さん

寺坂

現在、介護士の資格を持っているスタッフが6名います。
介護タクシーでは、介護の資格に加えて、ドライバーは二種免許(第二種運転免許)も持っています。当然、人件費などのコストはかかります。でも最初からそこには投資してきました。

 

病院のスタッフさんや医療・福祉の専門職の方からすると、同じように送迎をお願いするのであれば、資格を持っている人にお願いしたいという安心感があると思うんです。
実際、今の仕事の6割くらいは転院です。例えば、急性期の病院で手術を終えた方が、リハビリをする病院や施設へ移る。その移動を僕らが担っています。

 

病院の看護師さんや専門職の方から紹介していただくことも多く、そうしたところから少しずつ信頼を積み重ねてきました。

丸尾

車両もいろいろなタイプを揃えられていますね。

寺坂

現在は7台あります。
ハイエースタイプ(大きめのバン)が2台あって、これは寝たままストレッチャーで乗っていただける車両です。救急車に近いイメージですね。
そのほかに、車椅子の方が利用しやすい乗用車タイプが3台、軽自動車が2台あります。

 

歩ける方からすると、あまり大きな介護車両が家まで来ると目立つので嫌だという方もおられるんですよ。だから、自力で歩ける方なら軽自動車で行くなど、その人や用途に合わせて車を使い分けています。

寝た状態のストレッチャーも入るハイエースタイプ車内

3救急車と介護タクシーの間を担う「民間救急」

丸尾

もう一つの柱が「民間救急」です。介護タクシーとは何が違うのでしょうか。

寺坂

簡単に言うと、救急車と介護タクシーの間を担うような存在です。

 

地域の消防から認定を受けて、緊急性は高くないけれど医療的な配慮が必要な方などを搬送します。

 

例えば救急車で病院まで行ったけれど、帰りの移動手段がないという方もいます。救急車は帰りまでは送ってくれませんから、そういう時に僕らが対応することもあります。

丸尾

介護タクシーよりも、さらに医療に近いサービスなのですね。

寺坂

そうですね。民間救急の場合は看護師が同乗します。
現在、しえんたには看護師資格を持つスタッフが5名います。

 

民間救急は許可を取るための条件も厳しいので、対応している介護タクシー事業者は、この地域ではまだ多くありません。
でも、そこまで対応できる体制があること自体が、病院などから安心して仕事を任せていただくための一つの証明になると思っています。

4支援学校への通学から、修学旅行まで。広がっていく「移動」の支援

丸尾

現在は高齢者や病院への送迎だけではなく、子どもたちの通学支援もされていますよね。

寺坂

はい。誕生寺支援学校への通学支援を行っています。
行きと帰りの両方を送迎していて、津山市からの補助もあるので、利用されるご家庭の負担を抑えながら使っていただける仕組みになっています。

 

こうした通学支援も、まだ新しい取り組みなんです。
必要としている子どもやご家族がいても、送迎できる事業者がいなければ制度自体がなかなか動かない。相談があって初めて仕組みができていくような部分もあります。

 

僕らが対応できるようになったことで、少しずつ利用が広がってきました。

丸尾

さらに、修学旅行の支援もされているとか。

寺坂

そうですね。

 

普段の通学や通院で顔馴染みになって、「だったら修学旅行も来てよ」と声を掛けていただくようになりました。

 

人も車両も増えてきたことで、できることが増えてきたんです。

 

一つの支援から信頼関係ができて、また違う支援につながる。そういう良い循環が生まれているのかなと思います。

519歳で見た介護タクシー。「これ、自分にもできるかもしれない」

丸尾

ここから寺坂さんご自身について聞いていきたいと思います。
高校時代はどんな学生だったんですか。

寺坂

美作高校に入学しコースを選ぶときに、親から「どうせなら資格が取れるところにしなさい」と言われて福祉系のコースに入りました。

 

そこで高校3年生の時に、介護福祉士の国家資格を取りました。
でも当時は、介護の仕事をする気は全然なかったんです(笑)。人と接することは好きでしたけど、介護の仕事をしようとは思っていませんでした。

丸尾

卒業後も介護職には進まなかったんですよね。

寺坂

はい。高校卒業後は、自動車部品関連の製造業に就職して、製造の仕事をしていました。まさか自分が今、介護に関わる仕事をしているなんて、当時の知り合いはみんなびっくりすると思います。

 

ただ、僕としては介護そのものというより、移動のお手伝いの仕事という感覚の方が強いんです。

丸尾

介護タクシーに興味を持ったきっかけは何だったんでしょう?

寺坂

19歳くらいの時ですね。
夜中に祖母を病院の救急まで送ったことがあったんです。救急車を呼ぶほどではなかったので、「病院まで連れて行って」と言われて、夜中の12時くらいに病院へ行きました。
そこで、初めて介護タクシーを見たんです。

 

その時、利用されていた方も高齢で、介護タクシーを運転して車椅子を押している方も高齢でした。それを見て、「なにこれ?」と思ったのが始まりでした。学校で「老老介護」という言葉は習っていましたけど、実際に目の前で見て、大変だなと思ったんです。

 

僕はもともと人が好きで、運転も好きでした。それに介護福祉士の資格も持っている。
「これ、自分にもできるんじゃないか」と思いました。

丸尾

その時点でもう、事業として考え始めたんですか!?

寺坂

そこから調べましたね。自分が利用する側だったらと思って、津山にどれくらい介護タクシーがあるのか調べたら、当時は本当に少なかったんです。

 

当時は介護タクシー自体の認知度も低くて、ケアマネージャーさんでも詳しく知らないような状況でした。だから、自分が情報を発信して、知ってもらえば使ってもらえるんじゃないかと思ったんです。

6会社員をしながら2年間準備。似た地域にも足を運んで学んだ

丸尾

でも思いついて、すぐに会社を辞めたわけではなかったんですよね。

寺坂

そこは結構慎重でした(笑)。会社員として働きながら、2年間くらい準備しました。休みの日は遊ぶか、介護タクシーのことを調べるか、みたいな生活でしたね。
開業資金も必要なので貯金もしましたし、融資を受けるためにはどうすればいいかも調べました。
それから、実際に介護タクシーをやっている会社も見に行きました。

丸尾

どちらの地域に行かれたのですか?

寺坂

兵庫県の豊岡市です。豊岡市は人口や高齢化率が津山市と似ていたんです。都会の介護タクシーを見ても津山では参考にならないと思ったので、人口が10万人より少なく、高齢化率も高い地域を探しました。そこで見つけた事業者さんに連絡して、「見学に行ってもいいですか!?」とお願いしました。

 

その方に教えてもらったのが、「やるなら軽自動車1台からではなく、最初から何でも運べる会社にした方がいい」ということでした。車椅子しか対応できなければ利用者が限られます。それよりも、「何でも来い」と言える会社の方が地域では必要とされる。
それを聞いて、最初からハイエース(大きめのバン)を導入することにしました。

ハイエースタイプの車両 民間救急にも対応する
丸尾

そして2020年に創業された。

寺坂

はい。最初は僕一人、車両1台からのスタートでした。
21歳の時ですね。二種免許(第二種運転免許)が取れる年齢になって、ほぼ最短くらいで始めた感じです。そこから少しずつ雇用を増やして、車両も増やしてきました。

 

今は車両が7台。介護の資格を持つスタッフが6名。
看護師資格を持つスタッフが4名という体制になりました。

 

最初から「地域のために」とか、強い使命感があったわけではないんですよ。
どちらかというと、「これは事業としていけるんじゃないか・・!?」というところから始まっています。でも、やっていくうちに「こんなに困っている人がいるんだ・・!」と分かってきました。そうすると、「もっと対応できるようになりたい!」と思うようになったんです。

丸尾

「SWAG通信」というニュースレターも発行されていますね。

寺坂

主にはケアマネージャーさんや病院のソーシャルワーカーさん、社会福祉士さんなど、専門職の方に向けて作っています。

 

普段から毎回しえんたを使ってもらわなくてもいいんです。でも現場で「これはどうしよう!?」となった時に、「そういえば、しえんたなら対応できるかも!」と思い出してもらえたらいい。「こういう機材があります」「こういうスタッフがいます」といったことを日頃から知ってもらうためのものですね。もちろんご家族にもお渡ししています。

 

サービスだけではなく、僕らがどんな人たちなのか、普段どんなことをしているのかも含めて、会社のパーソナリティが伝わるコミュニケーションツールにしたいと思っています。

発行されているSWAG通信 スタッフ紹介や休日の過ごし方なども掲載されている

7数をこなすより、一人ひとりに向き合える会社へ

丸尾

寺坂さんが大切にされている言葉はありますか?

寺坂

座右の銘みたいなものはないんですけど、しえんたには「利用者の笑顔を満開に」というキャッチフレーズがあります。ロゴの車輪も桜になっていて、津山の鶴山公園の桜をイメージしています。実は一時期、もっと台数を増やして、どんどん多くの人を送迎しようと思ったこともありました。でも1年くらい前に、「ちょっと待てよ・・!?」と考え直したんです。

丸尾

どう考えられたのですか?

寺坂

創業当初みたいに、一人ひとりにちゃんと時間を取ってサービスをしないと、利用者さんも満足しないし、自分たちも楽しくないと思ったんです。回転率を上げて、数をこなすことが僕らの仕事じゃない。

 

それで配車計画を見直して、一人当たりに使える時間を以前より20分くらい長くしました。
すると、「病院から家まで送って終わり」ではなくて、「帰りにちょっと買い物したい」とか、「家には降りなくていいから、家の様子を見てから病院へ行きたい」とか、そういう希望にも応えられるようになりました。

 

普段なかなか外出できない方の「ちょっとした願い」を叶えられるようになったんです。
僕は、そういうことをこれからも続けていきたいと思っています。

丸尾

これから先、株式会社SWAGをどんな会社にしていきたいですか。

寺坂

まず一番に考えているのは、「介護タクシー事業を終わらせない」ということです。
雇用も守らないといけないし、車両も確保して、できれば今以上のサービスをずっと提供できる会社にしないといけない。

 

僕らの都合で「もうやめます」となったら、利用してくださっている方が困ってしまいます。
だから、この事業を持続させることが、僕の大事な仕事だと思っています。

8自分たちの経験を、全国の介護タクシー事業者へ

丸尾

そのための新しい取り組みも始められているんですよね。

寺坂

はい。介護タクシー事業者向けのソフトウェアを開発しています。

 

事業を始めて1年目くらいから、自分たちが困っていることに対して、試行錯誤して作ってきました。県外の介護タクシー事業者さんと話をすると、まだ顧客管理や予約管理を紙でされているところも多いんです。紙だと過去のデータを探すのも大変ですし、急な依頼にも対応しづらい。

 

そこで僕らは、顧客管理と予約表を一つにして、さらにデータを蓄積できる仕組みを作っています。

丸尾

データが蓄積されると、経営にも使えますね。

寺坂

そうなんです。例えば、「どのくらい売上が上がったら次の車両を増やすのか」「人件費はどれくらいかかっているのか」といったことも、数字で判断できるようになります。

 

経営者にとっても便利ですし、働くスタッフにとっても使いやすい。そして利用者さんからしても、以前の利用情報がきちんと残っていれば、「自分のことを分かってくれている」と感じてもらえると思うんです。

 

将来的には、自分たちがこれまで蓄積してきた仕組みやノウハウを、同じ介護タクシー業界の人たちにも使ってもらいたいと思っています。

 

介護タクシー事業者にしか分からない悩みって、たくさんありますから。
自分が創業1年目だった時に、そういう相談相手がいたら絶対にありがたかった。
だからこれからは、自分たちが介護タクシーを運営するだけではなく、同じ業界を支える側、サポートする側にもなれたらと思っています。

丸尾

営業所を広げていく構想もあるんですよね。

寺坂

直営でどんどん増やすというより、「のれん分け」に近いイメージです。
「しえんた」という名前で、別のオーナーさんが営業所を運営するような形ですね。来年には美咲町にも営業所ができる予定です。

 

こちらから積極的に募集しているわけではなく、「介護タクシーをやってみたい!」という方から問い合わせがあった時に、一緒にできる体制を作っています。
もともと僕らが対応していたエリアでもあるので、地域で担ってくれる方が増えることは、僕らにとってもありがたいんです。

 

全部を自分たちだけでやるより、いろいろな人と一緒に広げていく方が面白いと思っています。そして、今後特に力を入れたいのは、先ほどのソフトウェアですね。
自分たちの会社だけを大きくするのではなく、介護タクシー業界そのものが持続していくための仕組みをつくっていきたいと思っています。

9「移動」の先にある、その人らしい時間を支えていく

丸尾

お話を聞いていると、最初は「介護タクシー」という一つの事業から始まっていますが、今は民間救急、通学、修学旅行、プライベートな外出、そして同業者を支えるソフトウェアまで、かなり広がっていますね。でも、根っこにあるものは全部同じようにも感じます。

寺坂

そうかもしれません。
移動って、できる人にとっては当たり前なんですよね。
でも、それができなくなった瞬間に、買い物に行くことも、家族に会うことも、孫の試合を見ることも難しくなる。

 

僕らは、ただA地点からB地点までお連れするだけではなくて、その人がその先で「何をしたいのか」まで考えられる会社でありたいと思っています。通院や転院から始まった関係でも、その次には「ちょっと買い物に行きたい」と言ってもらえるかもしれない。
「これまで行けなかったけど、しえんたがいるなら行ける」。
そう思ってもらえる存在になれたらいいですね。

丸尾

「利用者の笑顔を満開に」という言葉が、まさにそこにつながっているんですね。

寺坂

そうですね。たくさんの人を運ぶことだけが目標ではありません。
一人ひとりとちゃんと向き合って、その人の「行きたい」「やりたい」を支えられる。
それを続けられる会社にしていきたいと思っています。

移動の先にある笑顔のために。介護タクシーから変える、移動の当たり前。

笑顔で両手を広げながら語る寺坂実成さん

 

株式会社SWAG 介護タクシーしえんた
岡山県津山市を拠点に、全国対応の介護タクシーや民間救急などを提供。

お話を聞かせていただき、ありがとうございました!
お話を伺っていて印象的だったのは、ゼロから起業した寺坂さんが、最初から大きな使命感を掲げて、この事業を始めたわけではなかったことです。

 

「これは自分にもできるかもしれない」。そんな気づきから始まり、事業を続ける中で、移動に困っている人の多さを知り、「もっとできることを増やしたい」とサービスを広げてきた。その歩みからは、目の前の困りごとに一つずつ向き合ってきたからこその説得力を感じました。

 

下ろされた車椅子リフトの横でしゃがんで説明する寺坂実成さん

 

通院や転院はもちろん、買い物や旅行、孫の試合、さらには支援学校への通学や修学旅行まで。しえんたが支えているのは、単なる「移動」ではなく、まさに、その先にある一人ひとりの「行きたい」「やりたい」という気持ちなのです。

 

「移動できないから、あきらめる」をなくしていく。介護タクシーしえんたの車が走る先には、これまでできなかったことが「できる」に変わっていく、そんな地域の未来があるように感じました。
寺坂さんは、介護タクシー業界から、地域の「移動の当たり前」を変えていく、かえーる人でした。

 

ハイエースの後部ドア前で笑顔で談笑する寺坂実成さん

  • 2026年8月6日
  • レプタイル株式会社、INN-SECT(岡山県津山市)
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